やがて来る終末
終わりの始まり
東京、だろうか。だいぶ暖かい。全裸で放り出された格好だが、凍え死ぬほどではない。良かった。全裸なのはどうしようもないが。私の肉体を構成してくれたついでに服もどうにかしてほしかった。
さらに運がいいことに、ここは紅音のマンションのすぐ近くだった。なんとかして人の目をかいくぐって行けばどうにか……なるんだろうか。見つかって春先に増えるタイプの変態扱いされるのは嫌だなあ。
でも、そんなこと言ってられない。早く灯と合流しなければならない。その前に服を確保して。
3月31日、晴れ。うん、いい日だ。終末日和ってやつだ。
ルキフェルが死んだのは想定外だったが、魂を抜いた後の灯の肉体の輸送は手筈通り遂行されたので問題ない。そのおかげで、物理次元に戻ってきた灯の魂を封じ込めることに成功した。
深い次元から戻ってくるときに発生する時間の歪みが想定より小さくて助かった。冬くらいまで待つのも覚悟していたが、季節が変わる前に戻ってきた。そして、灯の誕生日が明日というのも実に素晴らしいタイミングじゃないか。父親として最後の誕生日プレゼントを贈ることができそうだ。
「……紅音、そんなに強く抱きしめられると服を着られないんだけど。」
「だぁってえぇぇぇええ!!」
当然でしょ!急に行方不明になってずっと心配してたんだから!えりりんが急に行方不明になって……聡兎さんも……。
一人ぼっちでずっと寂しかった。怖かった。大統領がいなくなって、それと同時に大爆発で発生した衝撃波でヨーロッパが壊滅。だんだん壊れていく世界に一人で放り出されてすごく怖かった。このまま退廃的な世界と一緒に死んでしまうんだと思った。もう、離したくない。えりりんと離れたくない。
2月9日くらいからずっと部屋にこもりっきりだった在理沙がようやく部屋から出てきた。久しぶりに見た在理沙の顔は酷い状態だ。目の下にはくまができていて、髪はぐちゃぐちゃ、ずっと洗っていない顔はあまり形容してあげたくないくらい不潔だ。変なにおいもする。
「…………た。」
全然聞き取れない。
「……なんて言ったの?」
「神が降臨した!」
ギンギンの目でそんなことを叫ぶ在理沙に私が感じたのは恐怖。怖くて、宥めるように言う。
「一回落ち着いて。状況を整理しましょう?」
「はあ……はあ…………神が、降臨した。」
だから、
「それってどういう……」
「あかりが……ACARIが帰ってきた!彼女は捕まってる!朝倉輝に!!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます