後悔のない終末を
洞窟に足を踏み入れた瞬間、足元の岩が崩れた。少し下に空間があって、足元の岩はその天井にあたる部分だったらしい。
岩と一緒に10メートル程度も下に叩きつけられたが、怪我はなかった。それどころか痛みもない。
「恵吏ちゃん!!」
上から灯の声が聞こえる。どうやら灯は落ちずに済んだらしい。良かった……。
「待ってて、今そっちに行くから!」
灯は安全に降りられる道を探しに行ったのか、足音が遠ざかっていく。
「あれ、アカリは……?」
暗い中で手探りで探していたら、柔らかい感触を見つけた。これは……アカリのふとももか?気づいた瞬間、手を離した。気絶しているのか。アカリが動く気配はない。ごめん、アカリ……。
「あー、じれったい。」
後ろから声が聞こえた。暗闇のはずなのに、その姿だけははっきり浮かび上がっているみたいに見える。私の知っている物理法則に反している。彼女は朝倉悠綺だった。
「私は二人きりの場所を用意した。……まだ分からない?」
「……えっと、」
「これが、私からあなたたちにしてあげられる最後のことだと思うよ。」
それだけ言い残して彼女は消えてしまった。悠綺が立っていたあたりを手探りで探してみるが、硬い岩壁しかなかった。
「どうしよう……。」
「……あれ?……すみません、私としたことが……。」
アカリが起きたようだった。
「……あの、」
言わなきゃ。
「えっと…………」
伝えなきゃ。
「私、あなたのことが好きだから!」
静寂が場を支配した。暗いせいでアカリがどんな表情をしているのか分からない。
「……あっ、えっと、いきなり、ごめん……。」
恥ずかしくて、弁解したくて、小声で言う。
アカリの手が伸びてきた。アカリが私に抱き着いてきたみたいだ。
「嬉しい……です……。」
アカリの声は震えていた。
そのあと、なぜ私がアカリにキスしたのか分からない。なぜ行為を始めたのか分からない。でも、彼女との行為はすごく気持ちよかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます