Flucht vor den Engeln
統一暦499年12月23日午前9時50分
スイス、ベルン。その郊外。
「まあ、これ以上先に行くと流石に怪しまれるだろうな。」
「どうするの……?」
紅音と聡兎は人工天使の量産機たちには特に怪しまれることなく保護されていた施設の外に出ることができた。そして現在、二人はベルン中心部から数キロメートル離れた場所までやってきた。周囲には何もない平原が広がっている。ここも昔――1000年ほど前は農耕地帯だったらしい。ただ、広い農地を確保した農業よりも遥かに効率のいい食料自給の方法が確立されたためにほとんどの農地は放棄され、現在に至る。
そんなどうでもいい知識は置いておいて、聡兎が何をしようとしているのかである。
「あの茂みがちょうどいいかな。」
聡兎は道の脇の茂みの中に入っていく。紅音も慌てて聡兎について行く。
「ずっと人工天使の知覚機能を調べてたんだ。わざとコップを落として聴力とか、長い廊下とかでは視力だとか。精密な測定はできるわけなかったが、それでも分かったことがあって、人間と同じように視覚による認知の割合が大きいってことだな。だから、こうして適当な場所に身を隠せば上空を旋回してる監視役の量産機たちは俺たちがちょっとやそっと騒いだところで見つけられない公算が大きい。……ここでいいか。」
聡兎が立ち止まったのは茂みの中で多少広がっている場所。
「俺に掴まっててくれ。ちょっと……いや、かなり危険かもしれないが、頑張ってみる。」
言われて紅音は聡兎に抱き着くように掴まる。
聡兎はポケットから携帯端末を取り出し、何か操作する。すると、聡兎が羽織っていたコートが捲れて、その背中から鳥のような羽が出てきた。
「SFみたいな戦闘機の翼みたいなのが良かったんだけど、狭い場所を潜り抜けるのを考えたら畳んだり自由がきくってことでこっちのほうが良いんだよな。それじゃ、行くか。
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