こういうのは失敗するもの

統一暦482年11月15日午後5時

 発着場にロケットが着いた。琉吏はこれに乗って帰る予定だ。

 琉吏るりは部屋で荷物をまとめていた。一番大事なデータの入ったカードを頑丈なケースに入れる。これで、無くすとか落とすとかしない限り安全なはずだ。

「あと一時間で出発か……。」

 琉吏の部屋のドアが開かれた。研究員の一人が入ってきた。

「高橋さん、ちょっとこっちに来てもらえますか?」

「?……はい。」


統一暦482年11月15日午後5時14分

 琉吏が案内されたのは狭い部屋だった。

 何なのか聞こうとしたときには案内した研究員は部屋の外に出ていた。そして、鍵がかけられる金属音がした。

「いきなり何をするんですか?!」

「プロジェクトリーダーから連絡があったんです。高橋結衣という人間は外部のスパイの可能性があると。事実が確認されるまでそこでお待ちください。」

「それじゃ今日は帰れないってことですか?」

「そうなりますね。ご安心ください。次の定期便までには対処を決定するので。」

「ちょっと待って……!」

 制止は聞き届けられず、足音は離れて行ってしまった。

 あまり手入れされていないベッドに倒れ込むように横たわる。一番大事なデータは持ってるのがせめてもの救いか……。さあ、どうするべきか。ここは月面。どこにも逃げ出せない。

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