第12話 教会からお呼び出し
小部屋を出ると、お小姓と近衛の隊長さんが戸口に張り付くようにして待っていた。
食堂に向かおうとする陛下に小姓はかけより「恐れながら 大司教の使いの方が、リン様に至急教会へお越し願いたいと迎えに参っておられます」とささやいた。
陛下は 首だけこちらに向けて「残念だねー せっかく一緒に夕食を食べようと思ったのに。君は急いで教会に行って行って。 念のために今夜君が止まる部屋に夜食を用意しておくから」とおっしゃった。
私は「はい」と答えて一礼し、お小姓と一緒に教会からの使いの元へ。
「大司教様がお待ちです。急いでください」
「どこまで」
「迎えの馬車を用意しておりますから お早く」
「どこに行くかを聴くまでは動きません」
「司教様から 聖堂までお連れするようにと承っております」
そこで ドラちゃんに念話で聖堂の屋根の上で待つようにと伝えた。
「わかりました ドラゴンと一緒に参ります。私は馬車で。ドラゴンは自力で聖堂の屋根の上まで飛んでいきます」
教会の使いは 目を目いっぱい見開いて 何かを言いかけたがあきらめて
「かしこまりました。馬車はこちらです」と告げて歩き出したので 私もそのあとをついていくことにした。
聖堂につくと 魔術師のセバス老が迎えてくれた。
「以前お目にかかった時は ドラゴンの卵を抱えておられましたが
こたびはドラゴンの護衛つきですか」と言って。
目礼すると セバス老はくるりと向きを変えて足早に奥へと進んでいった。
叔父上との話が弾んで2時間近くたったので 待っている方々はいい加減まちくたびれたのであろう。
どれほどいら立っているかを表に出さない大司教様とセバス様だけに 内心の緊張が高まった。
聖堂の奥にあるお小言部屋もとい聴聞室で 大司教様は待っておられた。
私は司教様の前に進み セバス様は部屋の中に入ってすぐに扉をふさぐ位置に立つった。
(取り締まりを受ける罪人になった気分だ)
「報告が遅い!」開口一番 叱責された。
「修道院設立の許可は先日すでに頂いております。設立日をいつにするかは私の裁量にまかす、設立後は事後報告でかまわぬと教皇様から許可をいただいたことははすでに報告しております。そして5日前に設立宣言を出した後 すぐにセバス様に念話を入れて詳細報告は後日伺いますが しばらく猶予をくださいとお願いと報告をお伝え願えるよう報告しました。」
「そこまでは認める。報告が遅いというのは、本日 王都についてから、わしに会いに来るまでが遅い! ということだ」
「申し訳ございません。王都に入る前に、本日の予定と明朝一番に教会にご報告に参るとお伝えしたはずですが」
「セバスを通して そなたの念話連絡は聞いた。しかしだ、わしは1刻も早くそなたから直接の報告を聞きたいのだ。ところがそなたはと言えば 連絡だけよこして自分は動きまわり 念話によるこちらからの発信は届かぬまま。まったく 一方通行の報告ばかりを受ける身にもなって欲しいわ!」
ひたすら黙って頭を下げた。
「まったく いつまでたっても子供よのう。それで本当に院長がつとまるのか?」
「勤め上げて見せます。どうかお任せください!」再び頭を下げた。
「そういうところが 子供だと言うに。仕方がない セバスをお目付け役として派遣しよう」
「それでは ますます教会への念話報告が一方通行になってしまいます」
私とセバス様がハモってしまった。
「それが狙いよ。いつまでも報告の仲介をセバスにまかせて甘えるお主への教育的指導じゃ!」
うわー 大司教様 厳しい~~~
でも言われてみれば おっしゃる通りであった。
「わかりました。これからは報告書を文書にしたため伝書士にとどけさせるか
自分で直接教会まで報告に参ります。
しかし今は」
「セバスに中央へのでの根回し係として王都に居残って欲しいというのであろう」と司教様が私の言葉にかぶせるようにおっしゃった。
「はい。修道院の基盤ができるまでは」
大司教は 私の顔をじっと見つめながらおっしゃった。
「5年後のコンクラーベで、わしはセバスを次期教皇として推すつもりだ。
だからセバスにリンド辺境デッド地方に教会を設立したという実績をたてさせたい。そのために わしはセバスを派遣するつもりであった。
しかしお前があくまでも我をはるのであれば、おまえ自身が今から3年以内に修道院を教会へと発展させ、セバスを司教として迎え入れるか、さもなければ、お前がコンクラ―べまでに大教会を打ち立て、お前を見出し育て上げたセバスの名前を高めよ」
「つまり セバス様なら4年でデッド地方に大教会を打ち立て繁栄させることができるとおっしゃるのですね」私は 大司教とセバス殿の顔を見据えて問うた。
腹の中では 私に実務を負わせてその成果をのっとり ついでに私の領地も
召し上げる魂胆なのだろうと問いただす気持ちを込めて。
セバス殿はにっこりと微笑み、「フェンリルとドラゴンを従える聖職者は、それだけで聖女や教皇に認定される資格がありますから。ましてその気になればリンド国全土を業火で覆いつくすだけの大魔女様と軽々しく敵対するつもりはありません」とのたまう。
「わしは 『信仰とは人の心の中にあり 世俗の掟となって人を縛る者であってはならなぬ』という理想を実現したいと願うお前やリンの熱意が生み出す未来を見てみたいと思う。
それゆえ お前たち二人がどのように役割を分担しようとそれが理にかなうならば反対はせぬ。
しかし結果がともなわなければ期限を切って断罪する。それが制度を守り秩序を保つ大司教の務めじゃ。
そしてわしは 目的達成のためにもっとも堅実と思える手を示す。」
「私は 母の血と涙、そして私の汗と涙のしみ込んだ領土をむざむざと明け渡す気はありません。対価の伴わぬ代償を支払う気もありません!
そして母方一族の使命、リンドの国土を守り民の低音な暮らしを守る使命を領土とともに引き継ぎ それを全うするつもりです。
ですから 人やモノの流通を促進し、現状司法権を握っている教会組織とは共存していきたいと思いますが、教会組織の支配下に置かれることはお断りします。
セバス殿が 国家の独立を脅かさず内政干渉を行なわない限りにおいては、教会組織の中におけるセバス殿の出世を妨げたりは致しません。
私の領地経営に協力していただけるのであれば、私もまた流主としてリンド国の教会への助力を惜しみません」
どーせ手の内は見られているのだから ここは本音で話そう
虚勢を張っていれるとみられるなら ドラちゃんと一緒に撤退するまでだ。
「しかし 私をただの手札として扱うのであれば 今後は世俗的なシステム面でのお付き合いに限られせていただきます。これまでのご厚情には感謝いたしますが」
二人の目をじっと見据えて言ってやった。
「ふむ 若造が どこまでやれるか見せて見よ!」
(まったく リンド国国王とスレイン国の宰相が後ろ盾についておるからと大口叩き追って)
大司教、心の声が丸聞こえです。
(セバス様 あなたの心の中を私は覗いたりはしませんよ)と念話を送り
大司教様に退室の許可を願って帰ることにした。
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