三者会談
※ 長くなったので二話に分けました。少し短めです。
「アホ言え! あれはお前があなんところに隠れとったきんじゃ。
あ、そう言うたらお前は俺に何ぞ用事があったんか?」
玄狼にそう訊かれた志津果は急にどぎまぎした様子でそっぽを向いた。
「よ、用事なんて別に・・なんちゃ無かったけど・・・#…$ᄆᄆᄇᄡ…ᄡᄚᄇ‥ᄆᄇ‥ᄡᄚᄇ」
あらぬ方向に顔を向けたまま、志津果はもごもごと口を動かして答えたが声が小さい上に発音が不明瞭でなんとも聴き取り難かった。
「何を言うとんか、ひとっちゃ分からんぞ。用事もないのにあななとこで何しょったんや? まさか俺に告るつもりやなかったんやろうけど。」
「当たり前やない! 何であなな時間に、あなな場所で告ったりするんな!
志津果が即座に玄狼に言い返した。すると郷子がぼそりと呟いた。
「ふーん、告る場所と時間は選ぶ、か。じゃ、相手は選ぶ必要がなかったんだ?
既に玄狼さんで確定していたって事なのね。」
「へっ? あ、イヤ、・・・そ、そんなんちゃうわ、ちゃう、ちゃう、ちゃう!
相手やったって選ぶん決まっとるやない! そんなん分かり切っとるから言わんかっただけやん! なんで
そんなん有り得んわ。」
「ちょう待て! どして俺が覗き魔なんど? 俺がいつ何を覗いたんや?」
「あたしのスカートの中覗いとるやん。黒のスパッツを喰い入る様に見たって言うたやない?」
「おい! 話しがふくらんどるやないか! ”喰い入る様に”ちゅうのはお前の脳内補完じゃろが! 大体、スカート穿いてあなんことしたら見えるんに決まっとるやろ。」
「フンッ どうやか! 色気の無いお子ちゃまに興味はないっちゅうことは色気のあるお姉ちゃんにならエロい興味がありまくりいうことやん。
この変態、すけべ、えろガキ!」
「ようけ言うたな。ほんだきんそれは不可抗力やって! 志津果こそ見えるんわかっとってわざに跳んだんやろうが。
お前こそ人に見せたい願望がある変態ちがうんか?」
「な、なんでやの、
泥仕合になりつつある二人の言い争いを見かねたのか郷子が割って入った。
「ハイハイ、どっちの露出願望が上なのかはまた今度の機会にして。
取り敢えず玄狼さん、私の胸についての発言を説明して貰えるかな。
発育途中の虚乳ってどう言う意味なのかしら?」
「エッ そ、それ未だ引っ張ってたの? いや・・・もう昔の事なんか忘れてさ、未来志向でいかない?」
「十数分前の事が昔になるんだったら私達が出会ったのは太古の話だわ。そんなに永い付き合いなんだもの、何でも話して貰えるよね?」
「・・・・・・」
「
さっきの話は一旦、棚に上げとくけんそっちを聞かせてつか。(聞かせて頂戴。)」
二人からギリゴリと圧力を掛けられた玄狼は口を開くしかなかった。
「浦島さん、志津果と闘った時に
で、俺が胸の事を言った後でも
一体、それだけの念能力をどうやって発現したのさ?
いくら浦島さんの念能力が飛びぬけていても発現の触媒となる
ところが見た所、浦島さんの身体にそれらしいものは見当たらない。目に付くのはその両の中指に嵌めた指輪ぐらいのものだし。
でも
ましてや
そこまで言って玄狼は郷子の
「それで?」
とだけ言った。玄狼は再び目を逸らすと言い難そうに答えた。
「後、以前に比べて変化があった処と言えば、その・・・胸のふくらみ具合・・ぐらいしか気が付かなかったんだ。
だから・・多分、そうなのかなと・・
えと、もし違ってたら・・・ゴメン!」
郷子は何も言わずに玄狼を見ていたがやがて口に白い手を当ててクスッと笑うと例のメゾソプラノの声で言った。
「そこにしか気が付かなかった、と言うより良くそこに気が付いたなって言うのが正直な感想だわ。」
「‼ じゃ、やっぱり・・」
「ブッブッー! 残念! 外れです。」
「エッ じゃ、どういう事なん?」
「ま、半分正解で半分不正解ってとこかな。
この二つの指輪はね、なんと
だから
「
玄狼は思わず声を上げた。
スプルトニウムが発見されてから二百年以上が経つがその間にスプルトニウムに関する様々な技術が発展した。
特に昭和三十年代になって日米共同研究で開発された
それだけではなくスプルトニウムの最大の弊害であった男子の出生率に影響を及ぼす放射線の発生量を従来の十分の一以下に収める事にも成功した。
これにより現在の日本では一時期、1:3にまで広がっていた男女の出生数の格差がどうにか1:2を下回る程に回復したのである。
もっとも男女数の格差における全ての問題が解決したわけではない。現在でも出生数の格差は依然として存在しているしそれ以外にも男性の生殖能力にかなりの低下と個人差とが生じている状況だ。それらは深刻な社会問題となっている。
そうした中で近年になって念能の発現効率を
これは発現効率が
別名、聖霊合金鋼とも呼ばれている。
但し現在において
余談ながら更に高度の発現効率を持つ
その為、郷子が身に付けている二つの指輪が
二つ合わせれば高級外車が軽く買えてしまえるほどの価値があるそれを無造作に身に付けている郷子に少しばかり壁のような物を感じてしまったほどである。
尤も玄狼が本当に庶民レベルの家庭の子供であるのかどうかは何とも言えない。少なくとも表面的な部分だけを見ればそうではあるのだが・・・
「それじゃその胸は・・・本物のおっぱ・・・い、いぎぃっ?!」
そう訊ねかけた途端、玄狼の脇腹にスタンガンの電撃もかくやと言う様な激痛が走った。彼は息が止まる程の痛みに思わず目を凝らして脇腹を見た。
そこには少年の様な青々しい堅さを纏った小麦色の腕があった。その腕の先から伸びた可憐さすら感じる細い指が彼の脇腹を思いっ切り抓り上げていた。
「痛たっ! 痛っ、たたたたっ! な、何すんや、志津果!」
「このセクハラ小僧め! 花も恥じらう年頃の女の子の前で何を口走っとんな!」
「おぃっ あ、ちょっ、ちょっと、やめ! クソっ、てえぇぇい!」
自分の手でどうにか志津果の腕を振り払った玄狼は未だ脇腹に残る灼けつくような疼痛に顔をしかめながら怒鳴った。
「この怪力女! 恥じらうんは花と
ホンマに全く・・・
ン? でもそれだったら浦島さんのおっぱ・・あ、いやその部分の急激な隆起は何でだろう?
まさか南海トラフ巨大地震の予兆か何かってこたぁないよな? ハハハ・・・
オォッ? おーとっとっとぉぉぉぉ!」
獲物を狙う蛇の頭の様にしつこく伸びてくる志津果の手を避けながら彼は独り言のような冗談を言った。
それが聞こえたのか郷子が花のように微笑みながらサラリと答えた。
「それはね、今は 乙・女・の・秘・密!
でもあと数年もすればその秘密は多分、真実になる筈・・・
だから玄狼さん、将来、あるある詐欺に引っ掛かってしまった、なんて後悔する事は無いから。
安心してね。」
「へ・・・・?」
何がどう安心なのか、いやその前にどうして自分が後悔する事になるのかわからないまま玄狼は首を傾げるよりほかなかった。
更に何故か急に不機嫌そうになった志津果が彼の身体へと何度も手を伸ばしてくる。
その執拗な攻撃から逃げながら彼はそう遠くない未来に二百年に一度と言われる大災害の如き波乱の運命が自分の身に降りかかって来るような予感がした。
注意
※ 鬼見城とは蜃気楼の別名。喜見城とも書く。
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