第14話 依存

あれから何度もあの御神酒を飲んでいる。


夢の中だけでも、あけみ達に会いたい。


自分の心を安らげるために。



この時を幸せのピークと世の中の人は言うのだろうか。

私が30の時、あけみと結婚した。


あけみはいつも可愛らしくて私の癒しだった。


扉が開いた瞬間、お義父さんと腕を組みこちらに歩いてくるあけみは本当に綺麗で神聖な雰囲気を漂わせていた。

私は熱いものが込み上げて、涙目になっていたのに気づかなかった。


その私の顔を見てあけみは優しく微笑んで

顔に触れた。


「かっこいいね。」


会場にいる人たちには聞こえないほど小さい声で、私に言ってくれた。


「綺麗だよ。」


「ありがとう。」


あの時の会話は誓いのキスより印象的だった。


結婚して子供が生まれ、まりんもおしゃべりができるようになってきた頃。


まりんを寝かしつけのんびりテレビを見ていると、


「公志くん。今度の連休、みんなで旅行に行こうよ。」


「いいね、あけみはどこか行きたいところあるの?」


「温泉があるところがいいな。」


「近場でもいいなら箱根とかかな?」


「まりん連れての遠出は初めてだから、近場のほうがいいよね。」


「そうか、まりんまだ旅行連れって行ったことなかったっけ。」


「うん、行っても区またぎくらいだったかな?」


「実家も近いから遠出することもなかったな。まりんもついに旅行デビューか、たくさん写真撮ってやろうな。」


「そうだね!箱根で宿調べよー♡」


隣にあけみが座り、るんるんで宿を調べ始める。


まりんの旅行デビューだからいい旅館にいこうと考え、

子供がいても周りにあまり迷惑をかけない客室に露天風呂、ご飯も室内で食べれる所にした。


私たちも子供を連れて始めて旅行に行くので、いつも感じないドキドキが止まらなかった。


旅行前日、まりんに旅行に行くことを伝える。

どんな反応をするのか楽しみで動画を撮りながら話す。


「明日は何の日?」


「ほいくえん、おやすみのひ!」


「そうだね。、お休みだから、パパとママとまりんで旅行に行こうと思ってるの。」


「りょこう?」


「いつもより遠いところにお出かけして、お泊まりするの。」


「じぃじとばぁばのところ?」


「ううん。こういうところに行くよー。」


と言ってあけみが携帯で宿の画像や周辺の温泉街を見せる。


「あ!おんせん!せんとちだ!」


「そうだよー、せんとちみたいのところ行くの。」


「わーい!たのしみ!」


せんとち?なんだ?


「あけみ、せんとちって何?」


「ジブリであったじゃん。」


「あー!あれね。」


せんとち楽しみ!と言いながら、まりんはお気に入りの服をかばんに詰め込む。

2泊3日なのだが1週間くらいの洋服を持っていこうとする。


「そんなに持ってくの?」


「お気に入りみたいだし、子供だからなにかと汚れると思うからこんぐらいで良いのかも?」


「まぁ車だからいいか。一応向こうに子供用の浴衣あるみたいだよ。」


「あ、そうなんだ!じゃあパジャマは一個でいっか。まりん、どっちか選んで。」


「うーん…。」


まりんはすごく悩みながら選んでいく。


おませさんになったなぁ。

可愛いし良い子だからすぐにお嫁に行ってしまうのかなと考えてしまう。


ぽちっと動画を止め自分の準備も進めることにした。


こんなに楽しみだった旅行なのに、帰りあんなことが起こるなんて思いもしなかった。

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