第11話 玄米

管理人さんとの買い出しをしながら、あの神社のことを考える。


あの村で行方不明になった人たちが、全員あの神社の修行をしているとして

今日会った観光客以外はどこにいるのだろうか。

管理人さんが神社の人では2人しかいないと言っていた。


となると矛盾が出てくる。

電子機器が禁止とはいえ、神社の敷地内であれば行動が出来るのに外で見たことがない。

行方不明者は十数人、どこかで出くわしてもおかしくないと思うのだが。


神社の中に入っても、今日いたメンバーしか見た感じいなかった。

あの丘の上にできている神社の敷地内になぜいないなのだろうか。

範囲はそう広くないのに。


「じゃあこれで買い物リスト完了だね。」


「はい。、リスト見て思ったんですが、すごい量ですね。」


「今回はいつもより人数多いからね。大変な時にありがとね。」


「いえいえ、前にも修行に参加された人いるんですか?」


「うん、たまにねー。」


「今も…、修行中なんですか?」


「そうだよ。」


「さっき神社の中を見た感じだといなかったのですが、たまたまですかね?」


「修行のにもレベルがあってそれに合わせて行動範囲が決まるみたいだから、ちょうどいなかったのかもね。」


「なるほど、流尽さんはやったことあるんですか?」


「ううん、無いけど快夜くんにちょこっとだけ教えてもらったんだよ。」


「そうなんですね、私も若かったら参加したかったです。1000円で三食寝床付きは魅力的ですよね。」


管理人さんは結構仲がいいのか。

まあ宿を提供しているもの同士話すこともあるだろう。


神社につき、管理人さんは運搬をお願いしにみんなを呼びに行った。


とりあえず重めの米から持ってくか。

30キロの米袋を一人で持っていく。

半分上ったころみんなの足音が聞こえてくる。


「一番重いの運んでくれてありがとうございます!僕も持ちます!」


神主が半分持つ。だいぶ楽だ。


「ありがとうございます。」


「いえいえ。あと2袋は僕が運ぶので、後は楽してください。」


「いいですよ、手伝いに来たんですから。二人で2袋運びましょう。」


「金武さん、優しいですね。ありがとうございます。」


こんな愛嬌がいい神主に裏の顔があるのか?

だとして、なにかメリットがないとそんなことしないよな。

人手が欲しいなら雇えばいいし、金がないなら1000円でこんな修行をすること自体しない気がする。


でも、この神主はあの御神酒を作っている本人だよな。

この間の一杯で飲んでいないし、夢を見たか定かではない。

今日帰ったらまた実験してみるか。


「ひぇー、あいかわらず30キロは重いですねー。」


「そうですね、なんでこんなにお米を買いだめしてるんですか?」


「私の神社の食事は、お米中心の食生活にしてもらって本来の日本人になってもらうことから始まるんです。

なので白米ではなく、玄米。魚や肉はなく野菜と果物を少々というメニューで

内側から変わってもらうプログラムになってます。」


「確かに魚と肉はリストにはなかったですね。そういうことだったんですね。」


「はい。最初は普段の食事が恋しくなると思いますが、数日経てば案外と慣れてくるんですよね。」


「へぇ、毎日鬼綺羅さんが作るんですか?」


「快夜でいいですよ。明日からは毎日参加者の方々に作ってもらいます。

続けられるようにするのが大切ですからね。」


「わかりました。確かに帰ってからも意識してもらったら嬉しいですよね。」


「はい。まあこの村に移住してくれる方が、もっと嬉しいんですけどね。」


「ああ、この村若い方あまりいないですからねー。」


「そうなんです。だから田舎の良さもついでに知ってほしいなと考えてます。」


「今までで移住された方はいらっしゃらないんですか?」


「参加者の方ではまだいないですねー、始めたばかりですからね。」


「あ、そうだったんですね。今までで何人くらい参加されたんですか?」


「今の参加者合わせると大体20人くらいかな?」


行方不明者もそのくらいの数。

やはりこの修行を受けた人がただ連絡を取っていないだけなのだろうか。


数回往復してすべての荷物を運び終わり、手伝いは終わってしまった。


いい情報を手に入れられた。

ノートにまとめて報告しなくては。


まああの参加者はしばらくあそこの神社で修行するのだろう。

そう考えると目に届く範囲で行動してくれるので調査しやすそうだ。

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