第73話 違う世界

私は泣いていた。友人が亡くなったのだ。


友人は生前、こう言っていた。


「自分が死んでも、決して泣かないで。私は違う世界にいくだけで、


きっとその世界でも幸せに生きているから」と。


死後の世界なんて信じていないけれど、友人は信じていた。


そしてそんな話を、バカ真面目に語る友人のことが私は好きだった。


友人は長いこと病気だった。体が不自由だった。


だから死後の世界への興味を強めたのかもしれない。


私は友人を弔った後、家路についた。


「ただいま」といって家の中に入る。


そこには友人がいた。といっても、もちろん幽霊の…だ。


決して触れ合うことも、話をすることもできないけれど、


友人の言いたいことは分かった。


なぜって。泣いているから。


違う世界に行っても、過ごす場所は変わらないのだ。


ただ次元がちがうだけ。そうしたことに気づいてしまったのだ。


だから友人は、ほとんど変わらなかった世界をあきらめ、


世帯を変えた。だからうちに居候している。

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