第12話 鈴虫

秋の夜長は、虫の音を愉しむことができる。


鈴虫は、江戸時代から虫かごに入れて鳴き声を聞いてきた。


月は、十六夜から立待月、居待月、寝待月などと、


一日、一日と出てくるのが遅くなっていく月を、


立って待つ、座って待つ、寝て待つ、として、


その出てくることすら愉しんできたのだ。


しかし長屋なんて、それこそ薄い板一枚で仕切られ、


話声すら筒抜けだったということだから、虫の音が


嫌いな人にとって、それは騒音だったにちがいない。


江戸時代に騒音問題があったのかは分からないけれど、


超過密社会だったのだから、トラブルなんて


そこら中で起きていたことだろう。


そういえば、鈴虫は草食の昆虫ではあるけれど、


せまいところに多くの数を入れておくと、共食いをする虫だ。


江戸時代も、多くの人が狭いところに集まっていた。


何度も飢饉があった。


鈴虫と人と、私たちはどちらを愉しみますか?

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