第60話 幕間9

「先程の話と関連がありますが、坊っちゃまが何かを叫んだ後、扉が勝手に開いたとティオールが言っていますが、カショウも同じ意見ですか?」


 坊っちゃまが何かを叫んだ……?

ああっ!

あの、『開けゴマ』って言ってた事かな?


「叫んだって言うか、『開けゴマ』って言ってましたよ?」

「ふむ……」


 『開けゴマ』って、扉が開かない時に冗談として言う事はあるよなあ。

まぁ、それで開くとは思わないけど、何となく?試してみたくなるのは日本人の性ってやつなのかもしれな、い……?

 ん……?

──日本人?

ここは地球でもない異世界で、日本なんて国があるわけでもなく、勿論日本人なんているわけでもない。

なのに、『開けゴマ』?なんかおかしくないか?

いやでも、もしかしたら公爵家とかお貴族様の間ではそう言うとかかもしれないし。


「まず、ですが、ティオールは坊っちゃまが何かを叫んだのは分かったそうです。

 でも、それを言葉として認識する事が出来なかった。

 聞き取れない距離だったとか言うのではありませんよ?

 のです」

「え? いやでもお……ゴホンッ。私は確かにそう聞こえました」

「ティオールはルークディアス様の侍従見習いです。

 まだまだ至らない点は多々ありますが、勉学に関しては滞りなく修めております。それは言語に関しても同様です。

 その彼が言語として認識出来ないのに、カショウ、あなたは出来た。

 そうなると自ずと答えが出るのでは?」

「え?……」


 いやいやいや!

全くもって答えなんか出ませんよ!

 俺の困惑を置き去りにして、マティアス様は話を続ける。


「カショウ。公爵家が人を雇う以上徹底的に身辺調査をします。まぁ、それは貴族としては当たり前の事ですが。

 調査内容は多岐に渡ります。内容に関しては勿論言えませんが、その中には本人自身も気付いているのかいないのかという情報もあります。

 そして──敢えて秘匿しているだろう情報も」


 そう言って一呼吸おくと、俺を真っ直ぐ見据える。


 え?何!?怖いんですけどっ!?


「カショウ、あなたは──転移者ですね」

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