第41話 幕間 7

「さて、途中参加させて頂くが、申し訳ないが状況が把握できていない。

 なので、この話し合いの主旨に外れるようなら指摘をして、話の修正をお願いする」

『うむ。話し合いが少しでも早く終わるなら我に異存はない』

「お仕事の邪魔をしてしまいまして、申し訳ございません。クリス様……」

「謝る必要はないよ、シャル。私達の子に関わる事だ。

 だから、この話し合いに間に合って私は良かったと思っているよ」


 クリス様は私の頭をサラリと撫でて微笑むと、すぐに表情を変え、ピョンタもどきを見据えました。

その瞳には魔力が宿っています。

相手の存在を、本質を見極める為でしょう。

魔眼持ちであるクリス様だからこそ、出来ることです。


「それでは、既に知っているかも知れないが、私はユーリの父でクリストファー=ロンヴァッハ=ロッツォ=ウティナだ。

 貴殿の名を教えてもらえるだろうか」

『うむ。我はピョンタである』

「それは、その入れ物の名前であって、貴殿の名ではない筈。

 精霊故に真名を教えろとは言えないが、それでも通称はあるだろう?」

『我はピョンタ。それ以外の何者でもない。

 ピョンタの名が総てである』


 私が尋ねた時も同じ応えでした。

通称に何か問題があって、どうしても言いたくないと言う事なのでしょうか。

それにクリス様は『精霊』と仰ってました。

それなら、ユーリが倒れた原因が目の前にいるという事では!?


 ああっ!問い質したいですが、今はクリス様がお話し中です。

クリス様とのお話し次第では、締め上げないといけませんわね。


「属性的には……。光、か? マティアス」

「私にもそのように感じられます」

「なら、間違いないな。精霊自身がその属性を偽るのは、自身を否定する事になるからな。

 うーむ。光属性の精霊か……。過去に何霊かはいたが、その中に該当すればいいのだがな。

 マティアスの見立てではどうだ?」

「そうですね……。オデッセイ、ラトリーヌ、ピュルアー、ケヌファ、ファロメント……」


 マティアスが過去、伝聞などで登場した事がある光の精霊の名前をあげています。

その中に該当するのがあるのでしょうか?

 たとえ相手が大精霊であっても、ユーリを苦しめた報いは受けてもらわねばなりません。

私は一歩も引きませんわよ!

 ユーリ、母様が貴方の仇をちゃんととりますからね!


「それと、メルクリウ……」

「それだな」


 まあ!なんて事でしょう!

メルクリウは始まりの王と仲の良かった光の大精霊とのお話でしたのに、その子孫であるユーリを苦しめるなんて!


『何故、我がメルクリウだと思う? 人間界に此度初めて顕現したと思わぬのか?』

「まず、他の名前には反応せず、メルクリウの時だけ魔力が少しだけ動いた事」

「こちらに初めて顕現したにしては、かなり思考が歪んでおりますね。ある意味人に毒されております。

 それと、人を信用していない。

 これは、過去、人と何か問題があったからと愚考します」

「まぁ、そんな感じだな。

 もちろん、違うと言うのならば通称を言ってもらえればこちらも納得しよう」

『……』


 何も言おうともしないピョンタもどきに、苛々します。

早くユーリに会いたいなら、さっさと話すべきですわ。

自分が一番、話を長引かせていると分かっていないのかしら。

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