第20話

「父様。別に寝室で食べてもいいのではないかしら?」

「いや、倒れて寝込めばお菓子を貰えると覚えてしまう可能性があるからな。

 寝室から移動して、その意識を逸らしたい」

「ふーん。そういう事も考えなくちゃいけないのか……」


 とう様とねえ様とにい様が、歩きながらこしょこしょ話してますが、僕は気になりません。

僕の意識はマティアスがおしている、シューッて動いているモノにロックオン!されているからです!

 なんのお菓子ですかねー。小さなお皿に黄色いのが入ってました。

うー。わくわくしますねー!


 僕がお菓子の事を考えている間に、気が付いたら僕専用のお椅子に座ってました。


 ふぉっ!?


いつの間に、ですよ。

僕全然気付かなかったです。

 そんな事よりも、目の前にはあの、黄色のお菓子さんです!

ぷるるん、ぷるるん揺れてますよ!

 ほぉー!なんて、かわいいお菓子さん!

 僕、知ってますよ!

しょくれぽっていうのが必要なのですね!

うむ。

前世の記憶さんも頷いております。


 むわぁー!これはおかしのほうせきばこやー!って言わなくちゃいけないのですね!


むふっ!


まかしてください!


 スプーンを手に持って、さあ、いざゆかん!と思った僕ですが、テーブルの上を見て少し、しょんぼりです。


「あら、どうしたのユーリ? お菓子を食べていいのですよ」

「うー」


 かあ様をチラリと見て、とう様、にい様、ねえ様を順番に見ます。

そしてマティアスと、マティアスが押してた台を見ます。

もう一回テーブルを見ます。うん、変わらないです。


「ユーリ、楽しみにしていたのだろう?」


 食べようとしない僕に、とう様もどうしたのだろうと思ってるようです。


「僕はお菓子だいちゅきです。いちゅでもうえるかみゅかみゅ食べたいでしゅ。

 今もとーっても食べたいでしゅ。でも、今日はとうしゃまもかあしゃまも、にーしゃまもねーしゃまもいましゅ。

 なのに、僕だけでしゅ? 僕だけお菓子食べるでしゅか?

 僕はみんなとお菓子食べたいでしゅ……。うにゅ……」


 そうなんです。

みんながいるのに、テーブルには僕のお菓子だけしかありません。

 僕へのプレゼントのお菓子だって分かってるけど、美味しいお菓子は、みんなで食べるともっと美味しくなると思うのです。

 なんだか寂しくって、僕の眉さんもオリバー様みたいにへにょりとなってると思います。


「マティアスッ!」

「すぐにでも!」


 とう様が突然マティアスを呼ぶと、マティアスはおじぎしてサササッとお部屋を出て行きました。

あまりの早さに、僕のお目々ぱちくりしちゃいましたよ。


「そうね。みんなで食べましょう」


 かあ様がふわりと微笑いました。


 ふぉっ?


 とう様も笑ってましゅ。

そして、にい様もねえ様も……。

 何か面白い事あったのですか?

マティアスが早く動いたから、面白かったのですか?

 むーん。

面白いのですか……?僕には分かんないです……。

 

「さあさあ、ユーリ。みんなの分が揃いましたよ。食べましょうね」

「ふぉっ!?」


 なんたる早技っ!

僕がみんなを見てる間に、黄色いお菓子が増えてますよ!


 ふぉおー!

マティアスすごいっ!


 その後、みんな一緒に食べたお菓子はとっても美味しくって、幸せの味がしましたよ!

みんなのゆるゆるお顔が、間違いなく美味しいって言ってました。

勿論、僕のお顔もゆるゆるになりました。みんなお揃いです!


 あっ!


 おかしのほうせきばこやー!って言うの忘れてたです。

しょくれぽ忘れてたです。

記憶さん、ごめんなさいです。

 う?次回に持ち越し?

そういう時はこう言えばいいと記憶さんが言ってます。


──こうごきたいっ!

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