第31話 U-3
「どーすんだよ真夜ー」 「マツリンにスクリーン入れるし?」
「フリーでも入ってないじゃん? てか入らない時は何本打ったって入んないって」
「それユーリだけじゃん?」
などと言っているうちに相手の速攻からシュートが打たれる。
外すがリバウンドを取ったレヴィナに対して4人で囲まれ、ボールを奪われる。
ゴール下の2点を決められる。
ピーッ ディフェンス カウントワンスロー
「ぷっ 姫なにもやってないのにファウルってウケル」
「4人に囲まれたのは初めてです。センターの気持ちが分かりました。これは興味深いですね。やはり実際のゲームは見聞きや練習とは違います。入部して正解でした。これも、このチームでなければ起こり得なかったでしょう」
レヴィナは一通りのポジションは学んでいるが、練習以外の実戦でセンターをやるのは初ゲームとなる。真面目に自身の身に起こったことを分析していた。個々が非常にマイペースだった。
ガガンッ
ガツッ
「……」
その後、尚も茉莉のコーナースリーが演出される。が、未だ入らず。
茉莉の表情が1本ごとにサーッと青ざめていく。
茉莉、本日の3P 0/6 1Q残り1分半。
「イライライライライラ」 「ブー! BOOOOOO!」
「ひえええええ!」
茉莉がコーナースリーの練習を始めてからまだ数週間。そうそう簡単に身に付くものではない。しかしさすがにフリー込みの0本では立つ瀬がない。
▼
レヴィナがボールを運ぶ。3ギャルの茉莉への視線が厳しすぎる。
ハナは腕組みしながら立っている。完全におかんむりだ。
茉莉はどんよりしながら上がっていく。
「……。茉莉、アシストします。落ち着いて、一本決めましょう」
不意にレヴィナがボールを運びながら寄って来る。真夜へパスを入れずに、
そのまま右ウィングまで来た。
「私の頭上から、しっかりゴールだけを見て、狙ってください」
「!」
言うと直後にボールを茉莉へ入れる。そのままコーナーへ茉莉が向かうと同時に、
マークマンの進路へレヴィナが入り、スクリーンとなる。
完全にレヴィナが壁になり、頭上にリングが見えた。
――実戦に近い形になった!
優里に習った通り、落ち着いてワンハンドでシュートを放つ。
バスッ
――は、入った!
「あーーー、よかたー」
「うおー パチパチパチパチ! マツリンもう一流シューターだしこれ! な!?」
優里が胸を撫でおろし、真夜がハナの前まで繰り出し、やたら大げさに拍手をする。
「茉莉、今の感覚を忘れずに」
「うぅ、ぐすん、ありがどうレヴィぢゃん、私、レヴィちゃんみたいな指導者にバスケ習いたい。ズズッ」
海松北はラストポゼッションを時間をきっちり使い切り、1年F青嶋がスクリーンから2点を決める。本日スタメン唯一シュートを打っていなかったため、得点機会の演出がなされた。
天百合ラストポゼッション。
「ヘイヘイヘーイ!」
優里がぴょんぴょん跳ねてボールを要求している。茉莉のノルマは終わったので、レヴィナがハナをチラリと見た後ボールを入れた。
そのまま45°からスリーを放つ。受けてより、振り向きざまにいきなりのモーション、ディフェンダーは全く反応できず、唖然として振り返る。
スカッ パシッ
ボールはリングにカスりもせず、相手センターの手に収まった。
「あー? マジかよコッチもかよマツリン病うつったのかよー」
「うっせ! うっせ!」
ビーッ
そしてブザーが鳴る。1Q終了。一体何がしたかったのかすら分からない天百合、得点を称え合いながらも心地悪さを覚える海松北、双方ベンチへ引き返した。
天百合 5-25 海松北
▼
-啓誠館スタンド-
「あーすごい1Qだった」「見ててハラハラするよこのチーム」
「茉莉、あんなにスリーひどかったんだ……」
「ハラハラって、ここから逆転できるかあ? さすがにコレは一回戦負けだろー?」
「……。もう私達との練習試合を忘れたのか? ここから負けただろう?」
!
主将松下の一言に、面々が真剣な表情に戻った。
「……最後まで人いるの? テクニカルで皆いなくなるんじゃ」
「……」
ボソっと呟いたのは、冷静沈着な啓誠館のエース、都築だった。松下も異を唱えなかった。
▼
-永葉スタンド-
「意味不明なガードの4番のスリー連打が終わったけど、なんだったのやら」
「分っかりませーん、ハナの考えは分かりませーん」
「最後の茶髪の子のクイックのスリー、熟練のモーションだったわ。どのくらい入るのかしら?」
静流が凛理に聞く。視線は皆と別の人物を追っていた。すでに着眼点を変えてきたようだ。
「優里のスリー? 打てばタフショットでも半分は入るんじゃない?」
「……へえ?」「さすがにそれはない。凛理の冗談嫌い。もうパス出さない」
「ちょーーー! マジマジ、マジですってー!」
▼
-天百合ベンチ-
「ハナノルマきついってー」
「そそ、同じ攻めだけってありえなくなくない?」
「うぅ、ちょっと後半腕上がらなくなるかも……」
「やかましい。出来ないノルマは課してない」「スパルタかよー」
「ハナ? 2Qは私のインサイドとのことですが、茉莉と同じように全て回されても対応できないこともありますよ?」
「むぅ……。ガードは私が出る。茉莉は休み、交代。伽夜、出て」
「おお!? 姫の意見は通るんか?」
「よしこれから姫ご意見番なー」
「いよーし、いけー! インサイド令嬢ー!」
-海松北ベンチ-
「……。というわけでインサイドで来るらしい。上村行くぞ。杉井と中を固めろ。
バカでけえ声で会議してくれて微笑ましいぜギャルちゃん達はよお」
ビーッ
2Q開始のブザーが鳴る。
メンバー交代があった。天百合は茉莉がOUT、テクニカルファウルを1つ持つ伽夜がIN、海松北はF中村を下げ、言い合いがあって伽夜と同時に下がったC上村をINさせる。
マークマンがズレたため、伽夜と村上はマッチアップではなくなったようだ。
ハナにPG谷口、優里にSG内山、真夜にF青嶋、伽夜にFC杉井、レヴィナにC上村。
サイドラインからハナにボールが入る。ドリブルしつつ片手で配置を細かく指示し始めた。
ガツッ 「あっ」
するとボールがハナのつま先にあたり、転々とこぼれる。瞬時にPG谷口が奪い、レイアップを決めてしまった。
天百合 5-27 海松北
「ハ、ハナちゃんどんまい!」
ベンチから茉莉が声を出す。思えばハナがガードをやるのを見るのはいつ以来だろうか。しかしハナのやらかしに対して3ギャルの爆笑もブーイングも起こらなかった。報復を嫌がっているのだろう。
ムクれっ面をしたハナが真夜を呼び寄せる。結局真夜に運ばせるようだ。相手のディフェンスはマンツーマンのまま。しかしインサイドを引き締め、しっかりセミサークルを守っているように見えた。
「ありゃ? なんで姫で行くってバレてんだー?」マ
「あんだけ騒いでりゃ普通にバレるってそりゃ?」ユ
「お手並み拝見、そーい!」
真夜から投げやりな、かなり高いパスがぶん投げられる。
しかしググっと伸びあがったレヴィナが片手で受け止め、着地し抱え込む。
あっという間にディフェンスが収縮してきた。
ピッ! ファウル ディフェンス 海松北5番
ポストアップぎみからターンに入ったたところで笛がなる。
シュートモーションが判定されフリースローだ。
「うおお、やっぱ姫うまいのー」マ
「姫フリースロー入るん?」カ
レヴィナの一投目、きっちり決めるが、二投目は外す。
海松北のカウンターが来た。
エースで主将のF中村の速いドリブルで一気に駆け上がる。が、
「はいはいーいかせませんよー!」
!
戻って立ちふさがったのは伽夜、同時に走っていたSG内山にパスが出る。
そのままレイアップにいった。瞬間――
バシンッ
すさまじいブロックが襲った。ボールが弾かれる。
レヴィナだった。アウトオブバウンズ。
「「で、でたああああ! 諸行無常ブロック!」」
「そ、そんな名前だったんだ……」
海松北のメンバー、ベンチ共に驚きを上げる。
天百合の急に始まったディフェンスに対してだろう。
▼
-永葉スタンド-
「ブロック、高い。静流といい勝負?」
「OFも柔らかかったですね。ふふっ 県内は張り合いがなかったので、楽しみです」
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