雨に打たれて

五月雨浴びて

腐食したトタン屋根が

歌ってる


メッキの執念、悪足掻き

薄皮頼りの繋がりが

鎖のように固いのに

中途半端な自由が

心を優しく舐めて腐らせていく


愛簿と欲望は

後戻り出来ないほどに

溶け合っていく

赤くなるのは初な証なの?


坩堝の底の不純物を置き去りにしたのが

破滅への初歩だった


光沢は雨雲のように

その場に留まり動かない


水気の多い恋心

置手紙もなしに蒸発したのは

遺言の代わりなの?


噛み締めた奥歯が痛むのは

炭素の過不足、どちらだろう


雨から逃れようと北に向かった忘れ花

道行く蜂に教わった歌を

口ずさみ、腐れた葉先の疼きを紛らわす


恋の歌の皮を被った、たたら歌

鋼鉄の針が楽しげに揺れるのは

己の毒に酔ったためなのか


五月雨浴びて

腐食したトタン屋根が

歌ってる

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