酒瓶よりときのしたたる夜長かな

【読み】

しゆびんよりときのしたたるよながかな


【季語】

夜長〈秋〉


【大意】

酒のビンから時間がしたたりおちる(秋の)ながい夜である。


【付記】

これは目下の自信作である。俳句のことになるとうるさいわたしの自信作はひとの目にどう映るだろうか。


空になった酒のビンの最後の一滴までさかずきに注ごうと時を惜しまずにいるのを、時間(時)がしたたると表現した。そのようすからは、酒をふかく愛する人間(とりわけ作者たるわたし自身)のすがたがおのずと浮かんで来はしないだろうか。


【例歌】

なよ竹の夜長きうへに初霜のおきゐて物を思ふころかな 藤原忠房ふじわらのただふさ


【例句】

長き夜やいろいろに聞く虫の声 許六きょりく

語るにも夜ながくなりて別れけり 北枝ほくし

永き夜を半分酒に遣ひけり 太祇たいぎ

長き夜や通夜の連哥れんがのこぼれ月 蕪村

長き夜の寝覚語るや父と母 召波しょうは

夜長さや処もかへず茶立虫ちやたてむし 白雄しらお

百姓の夜長賑はし焚火影たきびかげ 完来かんらい

長き夜を我に向ふや屏風の絵 成美せいび

長き夜や心の鬼が身を責る 一茶

つくづくと行燈あんどんの夜の長さかな 夏目漱石


はらわたに春滴るやかゆの味 夏目漱石

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