第99話 闇の中の岸辺

黒の世界・・そして帰還



静かだ  そう思いながらアーシュは瞳を開けた。


エイルの肉体の一つ・・

宝玉に変化するはずだった・・エイルの分身

いや、エイルの分身と思われた白いネコ 白いネコは・・ゆっくりと少女の形を取る


そこに立っているのは

ネコの耳を持ち 古代の歴史に彩られた地 向こう側にあるのは砂漠


その古代の衣装を纏った少女 あの時の少女バステイル

あたりは一面の闇・・黒の世界



ネコ耳の彼女は アーシュの元に一歩一歩・・近づいてくる


彼女が歩む度に黒い地面は・・いや水音がした


黒い水は輝いて金色の波紋に変わり・・キラキラ輝きながら光の雫を放ちながら

静かにまた元の黒の水に変わる


「あたりが暗いから 本当は綺麗な透明な水なのに・・黒く見えるの」

そう呟く少女 バステイル


「ここは・・時間の川・・時の海辺・・

過去に置いてきたものたちが落ちてる場所ね」


「アーシュさん その手に握り締めたレグルスのかけら

レグルスの骨を見せて・・」


アーシュは自分の握りしめてるものに気がつき、その手を開くと

そこにあったのは・・最初にオルゴールに入っていたもの


白い骨のかけら・・

それと同じものであった


「私は・・レグルスが好きだったの

私はケンタウロス族を見守る神々の一人」


「本当なら歴史を多少捻じ曲げても

彼女を助けて天寿をまっとうさせてあげたかった」


「ほんの少し歴史が変わったけれど、たいした影響ではない問題もない・・」

一人言のように呟く少女


「彼女は大事な人を守る事を選択してしまった」

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