雨は降らない

空を覆った白雲はいつしか

灰と黒とを塗した色へと変わった

雲の内、白と灰の混じった中で雷は

遠く近く、近く、近く、遠く

響いて唸り

獲物を定めた獅子のような声を上げる

今すぐにでも大地へと落ちてゆけるぞと

しかし、それでも、まだ雨は降らない


雷鳴を内に含んだ曇天は

辺り一面をうっすらと闇色へと染めた

強さを増した風が吹き荒れて

ようやく咲いた向日葵を毟り取る

ならばもう、

もう、

上から大地へと雫が落ちるだけだ

それなのに、雨が零れることはない


落ちてくる透明で大地を隠して

雨音で全ての雑音を掻き消して

そしてこの部屋を、

鋭く降る雨で世界から切り離して

早く、早く、だから、早く

願うように空を見上げても

それでも、雨は降らなかった


願いは届かない、空は自分を見てはくれない

雨の代わりか、瞳からは涙が落ちて

胸の中には冷たく湿った風が吹く


それでも、雨は降らなかった

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