喫茶店で本の海

揺れるカフェオレは

いつ注いだのだっけ?

マグに触れる指先に

暖かさは伝わらなくて


テーブルに読みかけの本

手から離して置いてみれば

いつの間にかページは

残りあと五分の一


時計の長針は

わたしに秘密で一回転

肩越しに何となく

店員さんの視線が気になった

あの客いつまで居るのかな


でもあと少しだけ

少しだけ


カフェオレを飲み干して

時計の短針には

半円だけだからねと念押して

また本の海へと飛び込んだ


だって主人公になりたかったの

少女は王子様と幸せに

暮らしました とさ

そんな最後まで追いかけたくて


わたしのことなんて

少しだけ 忘れていたかったから

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