カラーズ・カラーズ:5 春を待つ季節のように

当てた刃は手首に紅を生んだ

滴る雫は白床へ

けれどそれは

広がり弾け溜まるだけ

紅が白に還ることは無く

白が紅を受け入れることは無い


冷えた部屋の内

零した吐息が白く凍っても

硝子窓のその向こう

闇の中の赤椿へと

その色が届くことは無い


だからきっと

閉じた瞳 瞼の裏に

いくら薄紅の花が浮いたとしても

冬枯れの幹には

蕾などつかないのだろう

いくら光浴びる新葉を思ったとしても

道に伸びる枝影が

繁ることも無いのだろう


混ざらぬ世界

弾かれたのは わたし

だからいくら貴方を想っても

わたしが届くことは無いのだろう


それでも思う

微笑む貴方を 隣に佇む貴方を

春を待つ 今の季節のように


わたしの内のその姿は

永遠でないと 一時のものだと

分かっていても それでも




―― ever green(エヴァー・グリーン)



「vertige」様(現在は閉鎖)の「色名で5つのお題」を元に。

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