第七話

 原因を解明した命は、愛莉鈴の部屋を出ると。専用のエレベーターに乗り込み一階に下りる。

 扉が開きエントランスホールを通り過ぎるときに、コンシェルジュの男性に挨拶をし、マンションをあとにした。

 目的の情報は手に入れた。とは言え、ここからが本当の勝負どころ。

 真夜中の満月の明かりがスポットライトになり、月読つきよみめい艶姿あですがたを披露される。

 命は月を見上げながら深呼吸をすると。


「狩るか」


 二酸化炭素と単語を吐き出す。

 

 命の身体の形が月明かりでアスファルトに投影される。

 地面に映し出されている髪だけが、不自然に揺れ動き、あるまじき速さで伸び、命を一飲みにした。



 逢魔時学園おうまがときがくえん、第四十二運動施設。

 ――別名、愛莉鈴ありす問題、処理対応施設。

 ――またの名をウサギ穴。


 奇抜な衣装を身に纏った容姿端麗の女性が立っていた。

 ある動物の印象を強調し意図的にデザインとして取り入れた、燕尾服えんびふく羽織はおっていた。

 羽織っている燕尾服の内側に隠された服装は、黒色のレオタードに上半身は赤色のコルセット。その装着しているコルセットには女性の魅力的な肉体曲線美を最大限にサポートする機能が備わっており。その効果により数段、体型をよく見せなる働きをしていた。

 上半身に負けず劣らずに、下半身もセクシュアルなコーディネートだった。

 白い肌をあえて半透明なストッキングを履くことにより、淡い色気をかもし出し興奮させる、チラリズム。さらに攻め立てるように、ヒップラインを自動的に押し上げるコルセットと同色の真っ赤なハイヒールの標準装備。

 そこに立っている容姿端麗の女性は。

 ――Bunnyバニー GIrlガール

 と、

 人々は呼ぶ。

 さりとて、バニーガールとは、人が想像で構築して創り上げたモノでしかない。

 ただし。

 いま、満月の下に居るのは、正真正銘のウサ耳と丸いウサ尻尾しっぽを持つことが、許された者。

 秩序からはずれた存在であり、ある役目をあてがわれし存在でもある。そして、あわて者であり、怠け者であり、異界へ誘う者でもある。

 ――白ウサギトリックスター、だった。



「ちょっと、エリス! 愛莉鈴が就寝前にゲームしてたら、止めなさいよ!!」 


 話しかけてきた人物が、ご機嫌斜めなことが声で理解できた。

 月光で生み出された、バニーガールことエリスの人影が波紋すると。黒い黒い繭が出現し、小さなヒビが入る音が繭全体から聞こえ瞬間! 蝶が羽を広げるときに舞い上げる鱗粉のように影が飛散し、不機嫌な顔をした、命が姿を現した。

 

 実に鮮烈な登場シーンにもかかわらず。


「そ、そんなことしたら……、わ、わたし……、の、きらいな……。にんじんを! 無理やり食べさせられるんですよぉー!!」


 涙目になりながら、エリスは情けない内容の抗議を自分の影から突如登場した命に驚くどころか、逆に命を驚かせる勢で両肩を鷲掴みにしながら、必死に前後に揺さぶった。

 そんな、日本では滅多にお目にかかれないであろう、バニーガールのコスチュームをしている、ロングのホワイトブロンドヘヤーのバスト:98.7cm、ウエスト:54.3cm、ヒップ:87.6cm、のエリスを見て。

 命は思った、

(にんじん、明日から意識して食べよう、かな)

 と。

 そんな、お茶目なことを考えいる、命、と、死活問題だと訴えいる、エリス、の第四十二運動施設の上空から大気を切り裂く風切り音が。



「これに乗って行くの?」


 拒否反応する、めい


「はい」


 無表情で肯定する、波旬はじゅん


「AH-64E Apacheアパッチ Guardianガーディアン、ですね。どうしたんですか? これ」


 キャーキャーと興奮気味な、エリス。


「愛莉鈴さんのお父様が使ってくれって、くださいました」


 じっと命は波旬が乗ってきた、乗り物を舐めるように品定めすると。


「…………、この物騒なの。おいくら万円?」


 と、エリスに尋ねた。

 小首を傾げるながら、エリスの眼球が左上に無意識に移動すると、そのまま自然と流れるように左下に。それから、命の瞳を見つめながら。

 さらっと問題発言をした。


「調達方法によって価格に差がありますが。約、七十億円前後です」


 その表情は尋ねなければよかったと後悔の念でいっぱいだった、命。


「へぇー、私の日給計算で何日分?」


 声が上ずっていた。

 エリスは自分の飼い主である愛莉鈴のボディーガードしている命に、支払われているお給金から計算する。


「七十万日、分ですね。年、計算にすると。約、一九〇〇年、分です」

「…………、ねぇ。これ、横流し、しない?」


 とんでもないことを命は、口走っていた。



 約、七十億円の物騒なヘリのコックピットの後部座席から眼下に広がる風景は……。

 森林地帯、砂漠と荒地、沼地、珊瑚礁の大地、霧の谷、などのいろいろな環境が、人為的に配置されていた。

 言ってしまうと、一つの箱に無理やり詰め込んだ。

 ――デジタルゲーム世界。


!」


 深緑色のヘルメットを被った少女が、観光気分で見た、この世界を吐露とろした。

 少女が発した、クオリティ=質がよい。と、いう意味。それと、高! という意味には、このゲームに対しての

 愛莉鈴の力を最大限にまでに、引き出せるだけの高品質なゲーム内容だということの。

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