第七章 【シナリオ】は続くよ完結まで
73.次のステップへ
「ようこそおいでくださいました。また来てくださったということは『生命の粉末』が完成したということですか? それとも、お茶をしにきてくれたとか?」
「ええと、『生命の粉末』が完成しましたので、その報告に」
「なるほどなるほど。それは早かったですね。私は異界の旅人さんでも一週間はかかると思ってましたのに」
「まあ、思った以上に早くスキルを鍛えられましたので」
「ああ、あれですね。リジェネポーション系統の大量生産。あれって熟練度的においしいですよね」
……思いっきりばれてる。
NPCってその辺も詳しいんだろうか。
「でもでも、ほかのお薬も作らなくちゃダメですよ? 薬の系統ごとに慣れておかないと上位の薬が作りづらくなりますからね」
「……本当ですか、姫様」
「はい。嘘は言いません。段階で通常の回復薬は千個ほど、状態異常耐性薬は二百個ほど作っておきましょう。それくらい作れば問題ありませんね」
……回復薬千個ってミドルポーションとミドルMPポーションあわせて千個ってことだろ?
作るのはやぶさかではないけど、薬草がなぁ……。
「おや? 作るのはお嫌ですか?」
「ああ、いえ。作るのはかまわないのですが、薬草が出回ってなくて……」
「ほうほう。薬草が出回っていないということは、ハーベスター薬草園がうまく稼働していないということですかね」
「ハーベスター薬草園?」
「サーディスクから離れた場所にある薬草園です。そこではいろいろな薬草が育てられていて、周辺の街に出荷されているのですが……なにかあったのでしょうかね?」
「それって、俺たちでなんとかするべきでしょうか?」
「いえいえ、そこまでなんとかしろとは言いませんよ。ほかの旅人さんにお任せしてもいいでしょう。サイさん、薬草園に行きたい方々はサーディスクの冒険者ギルドで『北の姫様から伝言、収穫の森へ行きたい』とギルドの偉い人……そうですね、サブマスターかギルドマスターに伝えてもらうようにしてください」
……ん?
そういえば、さっきからサイがやたら静かだと思っていたけど……。
あいつどこかとフレンドチャットしていたのか?
「あー、ごめんなさい、姫様。ここでフレンドチャットをするつもりはなかったんですけど」
「いえいえ、かまわないですよ。禁止するつもりなら、それができないような空間にしてしまえばいいだけですから」
「それで、フレンドチャットの相手に薬草園の話をしちゃいましたけど、問題ないですよね?」
「サイさんが問題ないと判断したのでしたらいいでしょう。でも、薬草園の方々も職人さんですからね?」
「そこは大丈夫だと思います。紹介したのも職人集団ですから」
「異界の旅人さんの職人ですか……興味がありますね」
「今度連れてきましょうか?」
「機会があれば。私はあまり騒がしくなるのは好きじゃないので」
「了解です。……そういえば、フィート。あとで、ガオンがあなたに話があるって」
「ふうん、わかった。……さて、姫様。話が流れてしまいましたが、これが『生命の粉末』です。お収めください」
俺はインベントリから『生命の粉末』を取り出して手渡す。
瓶に入った『生命の粉末』は、虹色にきらめく不思議な粉末だ。
「どれどれ……ふんふん。よし、完璧なできですね。これで、ダメだったらもう一回作り直してもらわなくちゃだったのですが」
「……よかったです。作り直すのはともかく、素材集めが大変だったので」
「ああ、カーズファントムの魂ですね。あれを集めるにはコツがあるんですよ」
「コツ、ですか」
「はい。魔法を使って一気に倒してしまうのです。たとえ悪霊の涙を使ったとしても、物理攻撃では魂が崩れていってしまいます。その点、魔法なら魂をあまり崩さずに倒せますので入手しやすいのですよ」
……なに、その攻略法。
できれば、もっと早く教えてほしかった。
ああ、でも、俺たちはふたりとも物理攻撃メインだから一緒か。
「ちなみに、ブッシュデビルの生き血はなるべく出血させないように倒せば簡単に手に入ります。ターミネートアリゲーターの心臓は……心臓を傷つけないようにですから、入手しづらくするのが逆に難しいですね」
「わかりました、説明ありがとうございます」
今更な攻略情報ではあるが、今後の参考になるかもしれない。
一応、心のどこかに覚えておこう。
「さて、『生命の粉末』の粉末が無事完成しましたので次のステップに移りますね」
〈クエスト『生命の粉末』をクリアしました〉
〈シナリオ『館の精霊』は次の段階へ進みます〉
〈クエスト『空・樹・大地の紋章』が発生しました〉
「さて、次に作っていただきたいものですが、三つの紋章になります」
「三つの紋章ですか」
「はい。それぞれ、空、樹、大地を表す紋章です」
「それにはどういった意味が?」
「それはまだ説明できません。まずはそれらの紋章を作成してきてください」
作る理由の説明はなしか。
そういえば『生命の粉末』のときもなかった気がするな。
「わかりました。それで、素材や作り方は?」
「それはこちらの本にまとめてあります。あとで確認してください」
姫様に渡されたのは丁寧な装丁が施された本だった。
作り方なんかも書かれているだろうし、あとでしっかり確認してみよう。
「ああ、そうそう。今回の紋章作りですが、必要なスキルは錬金術系統ですから気をつけてくださいね?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます