第120話月夜には 来ぬ人待たる かきくもり

                      よみびとしらず


月夜には 来ぬ人待たる かきくもり 雨も降らなむ わびつつも寝む

                      (巻第十五恋歌五775)


月夜には、来ないとわかっている人でも、つい待ってしまうのです。

どうせなら、空が一面真っ暗に曇って、雨を降らしてくれないでしょうか。

そうすれば、諦めがついて、わびしいと思いながらも寝ることができますのに。


恋人の夜離れが続けば、名月の夜とて、恨めしい。

いっそのこと、雨でも降ってくれれば、来ないとわかるので諦めがつく。

寂しいことには変わらないけれど、何とか眠ることはできる。


なかなか自分勝手な歌と思うけれど、それが恋の特質なのかもしれない。



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