第29話 夜に

俺たちは、疲れきった顔で街に帰っていた。

今日は、本当に疲れた。

というか、疲れたどころじゃなしい。

死にかけたし。

ちなみにグレアは、おんぶして帰っている。

正直重いから、代車に乗せてやろうか。


「もう辞めないか、クエスト受けるの。俺、店でも初めて楽して稼ぎたい」

「アホなことは明日から言いなさい。というか嫌よ。こき使われる未来しか見えないんだけど」

「大丈夫だよ、飲まず食わずで働かすだけだよ」

「嫌よそんなの、干からびちゃうわよ」

「でも、働いた分だけ稼げるぞ?」

「確かに....」


俺が、もし経営者になったら真っ先に雇おう。

多分、甘いものさえ用意していれば文句とか言わなさそうだし。


「セリナさんって、今更ですけどかなりアレですよね。見ないようにしてましたが」

「アレって?かなり何なの?」

「そうだな、自覚がないのがまた酷いよなぁ」

「どうやって魔法使いになったんでしょうか?ほんとに謎です」

「あたしはあれよ。魔法使いの家系だから、適性がそれはもう凄いのよ。具体的に言うと頭ね」


この説明の仕方が、もう頭悪いんだよなぁ。


「まぁ、なんだ。世の中にはありえない事とかが沢山あるってことだな。ちなみに筆頭はお前な」

「確かに、前代未聞ですよね」

「何よ、魔法使いに慣れたのが納得いかないの?!頭いいんだから、成れて当たり前でしょ?」

「そっかぁ。セリナは頭がいいなぁ」


俺は、このワンちゃんに慈しみの目を向けかながら頭を撫でてやる。

もう、パーティやめようかな。


「何よ、頭を撫でながらそんな目で見てきて。や、やめてよね私が可哀想な人みたいじゃない」

「違うのか?」

「違うわよ!この器用貧乏!」

「きっ....やめろよ、それ最近で1番気にしてることなんだから。ボロボロになって帰って来る度に、受付のお姉さんに笑われるんだよ」


俺は、心に貫通したトゲを丁寧に取り除いてやる。

そりゃ、サポートばっかだけどさ。

めちゃくちゃ地味だけどさ。


「ボロボロになりたくなかったら、私を見習いなさいな。見て、このキレイな格好。今日も完勝だったわ」

「そりゃな。俺たちの被弾の要因って7割お前だし、ボコボコにされたくなかったら、いい加減爆発以外でも当ててくれよ」

「確かに、最近は魔法の威力も上がってきてしんどいです。この前にくらった炎は、焦げるかと思いました。」

「え?避ければいいじゃない」

「分かったよ、お前の方に敵が行くけど。お前が言うのならしょうがないな。強い人が言うんだからな」


その言葉を聞いて、やっと理解したのか、必死にフォローに入り持ち上げてくる。


「でも、私助かってるのよ?例えばそう!ティアが止めてくれるかは当てられるの!」

「でも、一緒に爆破されますし.....。」

「ほ、ほら。倒せたら良くない?世の中にはね、結果良ければなんでも良しって言葉があるのよ!」


ねーよ。

なんだその恐ろしい言葉。

だったら、仲間に当ててもいいってか!


「それで、死んだら元も子もねーよ。あほ」

「あああ!またぶったわね!しかもアホって言ったわね!何よ、私が居なけりゃこのパーティは成り立たないのに!頭を殴って頭が悪くなったらどうするのよ!」

「ないものを殴っても悪くならないだろ。知ってるか?頭は悪くなってもマイナスにはないんだぞ?」

「何よ!脳無しって言いたいの?流石にあるわよ!」

「小石の大きさかな?」

「失礼ね。これでも知力は80もあるんだから!」


えっ....。

こいつ、俺より30も高いのか。

ありえねぇ、あいつが80なんて、ありえねぇ。


「ちなみに高いのか?」

「今のレベルから見ると、少し高いですね。非常に有り得ませんが」

「ティア、今日辛辣じゃない?!」


ワーワーと、注目を集めながら歩いていると、ギルドの前まで着いていた。

中へはいると、だいぶ遅くなっていたため、客は俺たちだけだった。

俺は、いつもの如く面倒なことを押し付けられていた。


「あのー、報告に来ました」

「心配しましたよ。なかなか戻られないので、死んだんじゃないかと思いましたよ。壊滅しそうなパーティランキング1位の自覚持ってくださいね!」

「ちょっと待って、そんな不名誉なものいつの間にしてたの?!」

「職員で決めているものなのでね。あ、ちなみにぶっちぎりでした」

「聞きたくなかった」


く、これも頭の足りない魔法使いに、イノシシのような戦士、武器が持てない僧侶のせいだ!


「でも、今回は成功したんでしょう?どうでした?現場は」

「とにかくモンスターが酷かったですよ。特に野菜たちが暴れてました。」


あれは、もう経験したくない。

ほんとよく生き延びられたよな、俺たち。


「あれ?動物たちはいませんでしたか?」

「あまり多くはありませんでしたね。それどころか、途中まで、全く見ませんでしたよ」

「おかしいですね。野菜を狙っていたはずなのに、全く居ないなんて。」

「確かにそうですね。鳥さえもいませんでしたし。」

「あくまで考察なんですけど、いいてすか?」

「聞きたくない、やめてくれ!」


厄介のとはもういいんだ!


「あの野菜たちは、生物にも寄生します。なので、もしかしたら、食べられる前に食べたのかも」


この世界おかしい。

普通、1番多くていちばん弱い植物が、多くて強いなんて、無理だ。


「なので皆さん、住む前に動物の死体を焼いてくださいね?じゃないと」

「じゃないと....?」


思わず喉を鳴らす。


「触手ですんごいことになります」


共存も大事かもしれない。

決して淫らなところなんてない。

でも、生物はみな平等。

命を粗末に扱うなんて、そんなこと出来ない。


「そんな、センチメンタルな顔になってもダメです、焼いてきてください」

「えええ、ギルドの方でしてくれないんですか?」

「普通ならしますけど、最近は忙しくてですね」

「それはどうして?」

「ボーナスの時期なので」


この世界やっぱ、ハードモードだわ。

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