第25話 リベンジ

「ホントに焼き払ったのな。こうもバダバタと横たわってると、勿体ないなんて思っちゃうな」

「1部は食べられると思うわよ?ほら、あそこのピューマンとか。」

「いや俺はいいよ。」


さっき、あんな捕食を見せつけられたらなぁ。あれで食欲無くなった。


「なら、私食べてこようかしら、野菜にハマっちゃったかも」

「私、食べられると思って調味料持ってきたわよ!」


見ると、ポーションの入れ物に5種類の調味料を持ってきていた。

こいつ、なんか準備に励んでんなと思ってたら、こんなもの持ってきたのかよ。しかも肉まで持ってきて、こいつこんな所でパーべキュー始めようとしてやがる。


「あー、美味しそうな匂いですね。私も食べます!」

「いいんだけどね?注意してくれよ?クエストの中に、ゴリラ以外の害獣もいるって書いてたからな」

「大丈夫だって。周りに何もいないし。」

「いざとなったら、ぱぱぱっと倒すわよ」


ほんとかなぁ?

こいつら、なんて気が太いんだ。植物モンスターも害獣もいるかもしれないのに、ほんとに食べだしたし。飲み物も出して....ってお酒かよあれ。ここで昼ごはんでも食べんのか?


「あ、これ美味しいわね。お肉もいいけど、この野菜。さっき殺したばっかりで新鮮だから、食感とか凄いわね。これにソースをかけると....美味しい!ソラさんも、そんな所でポツンとしてないで食べてみなさい!」

「俺はいいよ....いつ敵が出てくるかも分からないし。何より食欲がないんだ」

「いい?冒険者はね、食べられるときに食べないとやってけないわよ?」

「お前に冒険者の何たるかを教えられるとは、思わなかったよ。じゃあ俺からひとつ。敵の真ん中で、飯なんて食うなよ。」

「いいから食べてみなさいな、このツンデレくん」

「んぐっ.......、おいしい。特にこの野菜が、本当に新鮮」


さすがは敏腕農家。やはり、世界が違えば野菜も違うってところか。見た目は似ているが、味とか食感が少し違う。


「ん!このニンジンとかいつものより甘いぞ!」

「それニンジーって食べ物よ。それと、肉も食べてみなさいな。こんなこともあろうかとお高めの肉を買ったから、美味しいわよ」

「どれどれ....ほんとだ!口の中で肉汁が広がる!いつも硬い肉とは違う!」

「あ、それ私の肉よ。大事に大事に焼いていたというのに、あなたはなんで取ってしまうの!」

「ごめんって、ほら売れ残りの肉だ」

「縁起でもないからやめてよね。それ」

「わ、私の肉を上げますから、元気だしてください。ほら、見てください、新しい食べ方を見つけたんですよ。このレタチュで包むと美味しいですよ」


俺たちは、しばしの間バーベキューを楽しんだ。

あるものは酒を飲み、ある者は肉をくらい、油断しきっている一行であった。




「それでね、言ってやったのよそいつに。お前じゃ役不足だ、私が変わりにしてあげるわ、ってね」

「なんでそうなるんだよ。その人困ってんじゃんか!」

「いやいや、その後感謝されたのよ?なんなら拝み倒されたわ」

「人助けって、似合いませんね」

「お、言うようになったわねティアも。なんならあれよ、私、一日一善が主義だから」

「それを補えないほどの悪を働いてるけどな」

「私の事となると、途端に辛辣よねー。やっぱりツンデレ?」

「あら可愛い」

「ちげーよ、それが定着したらどうしてくれんだ。」

「いいんじゃないですか?モテるかもですよ?属性?ってやつをつけたらいいんですよね。グレアさんが言ってました」

「おいお前、なんてこと吹き込んでんだ」

「ち、違うのよ?これには深いわけが。あああああ、私の後ろに回り込んで何する気?ねぇ!」


俺は後ろにたち、ジャイアントスイングの構えを取ろうとする。すると、グレアは焦ったように話題を逸らしてくる。


「ね、ねぇ!そういえば目的の害獣って出てこないわね!」

「お、そういえばそうだな。不自然なくらいにな」

「なんだか嫌な予感がするのよ、だからそんな酷いことしようとしないで、帰りましょ?ね?」

「問答無用」

「あああああああああ」


数十回転したあと、遠くへ投げ飛ばす。


「酷いわ....穢れたわ。傷物にされたわ」

「おい、いちいちそういうこと言うなよ。勘違いされるんだよ」

「いいのよそれで、周りから固めて責任とってもらうつもりだし」

「こっわ、パーティから抜けるわ」

「逃がさないわよ、私の保険としてね」


おい、サラッと酷いこと言われたわ。


「離せよ!俺はもっとまともなやつと結婚するんだ!」

「見てよ、私、結構好物件よ?スタイル抜群、容姿端麗、プリースト」

「うるせぇ、酒癖悪いわ、男に汚いわ、金遣い荒いわ、全く使えないわでマイナス100点だ」

「女の子になんてこと言うの?!股間封印するわよ」


まじかよそんなこと出来んのかよ。プリーストまじ怖いな。


「ほんとはね、修行の時に、禁欲するための魔法なんだけど、特別にかけたあげるわ。」

「お、美人に見えてきたわ、だからそんな物騒なもん唱えんなって、おい!やめろよ」


取り押さえようとすると、支度を終えた2人が歩いてくる。


「ほら、火も消したんだから2人も早く準備しなさい。そんな所で遊んでないで」

「まて、こいつには1度お灸吸えてやらないとだな」

「そんなことより、火を消したら魔物がちらほら寄ってきたんですけど。なんでー?」

「あ、野生動物って火が怖いのか....そういや前もそうだったな」


だから、あんなにだらけきってても寄ってこなかったのか。なるほど


「1人で納得してる場合じゃないですよ!取り囲まれてます!」

「やばくね?これ」


イノシシみたいなやつに、カラスみたいなやつに、モグラに熊って、害獣のオンパレードかよ。


「ソラさん、酔ってるんですか?!早く作戦を!」

「いつものでいいだろ、セリナ、魔法は打てるか?」

「あんまり撃てないというか、撃てて2発ね。植物の時沢山使っちゃった」

「そういうことは、先に言えよな。てへっじゃねぇよ、ほんとにどうすんだよ!」


くそ、油断していた。セリナの魔法で瞬殺とか思ってた。どうしよう。煙巻いて逃げるか?でも囲まれてるんじゃ無理じゃん。うーん手詰まり☆


「みみみみ、見てよ。あのゴリラがいるわよ。なんか、他の魔物に吠えてるわよ!」

「なんて言ってるかわからんが、とにかくやばい。とりあえずグレア補助魔法を」

「むむむむ、無理よ。みんなここで死ぬんだわ!」

「大丈夫だって、ほら唱えろ。はやく!カタカタ震えるな、はやく!敵が来るだろ!」


やばい、こいつ本格的に現実逃避し始めた。お空に向かってブツブツ言ってるよ、こいつ。


「しょうがない、ティア、酒飲んでいいぞ。今だけな」

「なるほど、突っ込ませてそのうちに逃げるのね。いい考えじゃないの」

「えっ、酷くないですか?!」

「そんなんじゃねぇよ、倒すためだよアホ!」

「なるほどね、てっきり逃げるのかと思ってたわ」

「そんなこと言うわけないだろ、ってかあいつらもよく待ってくれてんな。ご都合すぎだろ」

「もしかして、敵意はないんじゃない?見て、ゴリラが他の魔物になんかしてるわ」


見ると、ゴリラが他の魔物たちに声をかけ、帰らせていた。

助けてくれてるのか?1回戦ったのに?

ゴリラの意図が読めない俺たちの前へ、ゴリラがのそのそと歩いてくる。


「きききき、来たわよ。ほら他の魔物たちが居ないうち逃げるのよ!ほらグレアも立って!」

「ちょっとまってください。敵意は無いようですよ」

「たたたた、食べられるんだわ。食べ頃な私はきっと....」

「オマエタチチョットマツ」

「「「「?!」」」」


ゴリラが喋った?!確かに頭いいとは聞くけど、ここまでなのか?何かの魔法?!


「サッキノショクブツ、タオシテクレタ、カンシャ」

「感謝?ああ、だからか。」


多分だけど、こいつも、さっきの奴らには困っていたんだろう。倒している時に魔物に寄生していたやつも見かけたし。


「ダカラ、マエタタカッタコトワスレテヤル、ダカラハヤクイケ」

「おお、願ってもない申し出だぞ!お前ら早く行くぞ」

「〖ファイアⅡ〗」

「ちょ、おま!」

「ほら、今がチャンスよ!早くやっつけるのよ!」

「オ、オマエ....」


こいつやりやがった!


「折角逃がしてくれるんだから、戦わなくていいだろ!ごめんなさい!こいつ馬鹿なんです!」

「なんで謝らせようとするの!悪いことしてないでしょ」

「してるわ!ほらティアも」

「オマエタチユルサナイ、殺す」

「くそったれええええ!お前のせいだからな、お前のせいだからな!」


うちの魔法使いは、魔物より魔物みたいだよ!

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