第24話 畑とは
畑とは、種まき、水をやり、栄養を与え、私たちに恵を与えるものの一つ。俺は、来る前は少なくともそう思っていた。しかし、この世界の畑は違っていた。そう、この世界の畑は.....
「なんで植物モンスターなんか入れてんだよぉぉおおおおお!」
そう、この世界の畑とは、植物モンスターを養殖する場所だったのである。
「そ゛ら゛ざ゛〜ん゛だずげでえええええ」
「ちょ、捕まってんじゃねえよ!」
見れば、キャベツ型モンスターのキャベッツンの葉に捕まっていた。
「あれはもう見捨てましょう!モンスターは、魔力が多い人を狙いやすいんです。」
「なんてこと言うの?!私はメイン火力よ?」
「メイン火力なら魔法打てよ!」
「あなた馬鹿なの?私も食らうでしょう?」
「いつものお前じゃないか」
「ムキー!いいわよ、やってやるわよ!〖ファイア〗。熱い熱い!萌えちゃう燃えちゃう」
「はは」
「笑ってんじゃないわよぉぉおおおお!」
「は、早く来てください!」
助かったセリナは、床で泣きながら転がって見せられない絵面になる。具体的に言うとドラ○エのジュ○ーマンみたいな感じ。ティアが怖がってんじゃん。
「というか、グレアは?さっきから静かじゃないか?」
「依頼主のおじいさんに、孫はいないのかと聞いていたのを最後に見てませんね。」
「あいつ見境ないのな。ほんとにどこにいるんだ?」
「ゼェゼェ....、わ、私もよ」
あいつ力弱いからなぁ。多分持ってかれたよな。このまま放っておいた方が、息遅れの苦しみを味あわなくていいかもしれない。
「もう、あいつは放っておくか。」
「「えっ?!」」
「だって、アホじゃんあいつ。」
「確かにそうですけど......、あの人がいたら色々恋のいろはを教えて貰えるんです!」
「ほう、例えば」
「例えば、童貞と呼ばれる女の子を相手にしたら、キョロキョロするソラさんみたいな人が居たら、甘い声でお話さえすれば奢ってもらえるそうなんですよ。後は、」
「もういい、もういい!だれが童貞だ、ふざけんじゃねぇ。後であいつは折檻だな」
唯一の少しまともなやつに、いらん事教えやがって、しかも決めつけるとかほんとにどうしてくれようか。
「あいつ見つけるぞ、今すぐ探すんだ。」
「この人いきなりやる気になりましたよ。なんででしょうか」
「いいことを見たわね。これからパシリにする時は、それをネタにするわね」
「おい、本当にやめろよ。そういう弄りって心削るんだよ。」
これからは、行き遅れで弄るのはやめてあげよう。
それはそうと、危ないよな。あいつ力ないし、組み伏せられて足から食べられてるかもしれん。
「てか、こんなこと話してる場合じゃないって。あいつ力3だぞ?植物に負けるんだぞ?悲しいことに」
「それもそうね。でも、私達も騒いでたせいで集まったみたいよ?」
「構えてください!来ますよ!」
「とことんモンスターに縁があるな俺たちは!」
でも、落とし穴作ってもあいつらには元々の地面に刺してた根があるわけだし、すぐ昇ってくるよな。しかもティアが言うには、魔力で探知してるみたいだし。
「今回は、セリナの魔法が頼りだ。じゃんじゃんもやしてやれ」
「いいのかしら?」
「ああ、じゃんじゃん燃やして焼畑農業してやれ!」
「いくわよ、〖ファイアⅡ〗〖ファイアⅡ〗〖ファイアⅡ〗」
よし、ガンガン燃やしていい感じだな!俺はそこら辺のやつでも切り刻んで、晩飯の材料にするかね。
「所詮植物だしな、張合いないなぁ。俺の剣の礎となりな!」
気合を入れて頭と思われる、花の部分を切り落とす。
「これで、終わ.....まだこいつ動くのかよ!」
頭を斬っても死なないとかゾンビかよ。どこまでもここは知識が通用しないんだな。
なんて感嘆してると、いつの間にか根っこのようなものが絡まっていることに気づく。
「ソラさん!そんなに棒立ちで眺めてないで!アホなんですか?!寄生されますよ!」
「まぁすぐ切れるでしょ。だって植物だよ?」
「アホなんですか?!根っこが少しでも入れば、そこからどんどん成長して、最終的には体が干からびますよ!」
マジかよ、この世界はどこまで厳しいんだ!そんなことより早く斬らねば!
「植物の分際で何絡みついて.....切れない、切れないって!セリナさーん!燃やして、燃やしてぇぇぇぇ!」
「しょうがないわね。今日の晩御飯でいいわよ、やってやるわよ!〖ファイア〗」
「あちちちちちち!燃える、美味しくなっちゃぅぅぅぅ!」
だが、この服のおかげが、熱いことには熱いが燃えることは無いようだ。
クソッタレとか言っちゃったけど、ちゃんとお礼しないと。マジ師匠と店主神。
「よし、ティアとセリナは大丈夫そうだな。あとはグレアだけど.....」
「ーーーーーーーー」
「食われてそうで怖いんだよな。あいつ」
「ーーーーーぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
「ん?何か声が....」
誰かの声か?こんな所に人なんて....
声のする方へ、歩いていくと植物が集っていた。
「おーい、大丈夫か.......マジかよ」
「ああああああああああ!!!!」
見ると、絶叫しながらグレアが植物たちを食べていた。あるものにはマウントの姿勢で手すら使わず食べ散らかし、あるものにはちぎっては食べ、ちぎっては食べを続けていた。その姿はまるで、血に飢えたライオンのようだった。
「きゃああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」
「ちょ、何よ、化け物を見たように。野菜を食べてただけじゃない!」
「お前、口元に血とかついてたり、服のあちこち緑色だし。寄生されてんじゃねぇか!」
「失敬ね!この赤、トマンティを食べてただけよ!緑は、葉っぱの汁でも着いちゃったんでしょう。」
ほんとかぁ?
「ちょ、近づくなよ。俺まで寄生されるだろ。」
「されてないって、ひとつ残らず食べたわよ!ゲフー」
「だから、そんな腹膨れてんのか。」
「そうよ、しかも結構美味しいのよ?ここの野菜。もともと依頼主のおじいさんは、賞を貰うほど敏腕の農家でね。高いのよ?」
へぇ、食べてみたいな。
「孫をたぶらかそうとした時に聞いたのかよ。」
「いるらしいけど紹介して貰えなくてね。なんでかしら」
「そりゃ、危ないヤツには紹介しないさ」
「うるさいわね。神の名の元に、トイレに行った時に後ろから揺らすわよ。」
「無宗教なんだろ、そんな時に限って神頼るんじゃねぇ。というか、そんなことしたら痴女の2つ名つけるぞ!」
喧嘩をしていると、その声を聞いたのか2人が駆け寄ってくる。どうやら殲滅したようだ。
「おーい2人とも、グレアも元気そうで良かったです。」
「もういいだろ、今度良い知り合い教えるから」
「ほんと?ならいいわ。今日のところは勘弁してあげるわ」
「どうやら元気そうですね。良かったです」
「そりゃ、あんだけ野菜食べてればな」
「「ああ....」」
確かにそういう倒し方もあるんだろうが、普通の倒し方では無いらしい。
「何度も切り刻んで倒すものなんですけど、まさか食べるとは。」
「あと燃やすとかね」
「生き汚いんだな」
「何よ!助かったんだから凄いでしょ!」
切り刻むところを、歯で切り刻むとか.....たしかに生き残ったんだけどね、軽く引くわ。
「何よその目は、もう分かったわよ!さっさとゴリラ倒しに行くわよ。さあ!」
こいつのこのガツガツした姿勢は見習うところがあると思いました。
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