第23話 浅はか

「よし、点呼」

「1」

「2」

「3」

「全員揃ったな、今回は俺たちの家が貰えるかもしれないクエストだ。引き締めていけ」


そう、待ちに待った例のクエストの日。今住んでいる小屋は、少々手狭になってきてあたらしい家が欲しいと思ってた矢先、マッチポンプなクエストを受けに行くわけだ。


「絶対やってやるわ!お菓子の恨みは酷いわよあのゴリラ!」

「今度こそしっかり前で戦います!」

「ふふふ、私の新しい力があるかちょっと待っててね」


いつもより5割増でウザイセリナを筆頭に、本人曰くさらに固くなったティアに、どこが変わったの分からないグレアの3人のやる気は、上々なようだ。


「やる気なのはいいが、気おつけてくれよ。相手はあのゴリラだからな。」

「そこは大丈夫よ」


自信満々なグレアが1歩前に出る。


「今からそこの家の前にある箱に、私の新たな力があるから、ちょっと待ってなさい。」

「妙に細長くて何度も蹴り飛ばしたあれか」

「邪魔だったわね、あれ。」

「ちょ、ちょっと、あれは貴重なのよ?なんてことを」


急いでグレアが箱を取りに行く。

そんなに大事なものだったか?てっきりゴミを捨ててんのかと思ってた。


「で、それは何なんだ?」

「刮目せよ.....これこそ、私の新たな力.....あれ、これどう開けるのかしら」


モタモタしてる。せっかく興奮して厨二病になったのに、やっぱりうちのパーティはシャキッとできない。


「よし取れた、さあ!刮目せよ!これが私の杖よ!」


高らかに上にあげるが、手がプルプル震えており持っているのが辛そうだ。そして耐えきれなくなったのか腕を離し、杖が体にめり込む。


「お、お前まさか。」

「私、力のステータスが3な事忘れてた。てへ」


どうやら根っこからのドジっ子らしい。


「ということはお前は」

「前と変わらないです!」


こいつ!


「だ、だって!これさえ使えば、前より補助魔法が強くなるのよ?!仕方ないじゃない!」


確かにそうなれば強いけどさ、使えないんなら0どころかマイナスじゃないか?


「本当に持てないわ、この杖は少し特殊でね。なんと言ってもこの石が凄いのよ。回復力を増やすのよ!」

「で、いくらしたんだ?」

「少ししんどかったけど、30万よ!ローンにしたわ」


こいつ、高いものを買うのになんで慎重に選ばなかったんだ...。残念すぎる。あともうう1歩頭が足りなさすぎる。


「でも使えないじゃん、どうすんだ?それ」

「それはもちろん....どうしようかしら。魔法って、杖を体の一部に引っ付けてないとダメなのよね。」


うーんと悩んでいるが、無理じゃん。ただの棒になってるじゃん。お金捨てただけじゃん。


「お前だけ成長しないよな、ほんと。」

「失礼な、私だって今回は.....」


どうやら、杖が手に入ってらくらくパワーアップするつもりだったらしい。そのせいで全く本人は何も変わってないと。


「お前、いる?」


おっと、つい口に出してしまった。


「ああああ、散々弄んだ挙句捨てるのね!傷物にしたくせにいいいい!責任取ってよ!」

「責任はちょっと。」


言われも無い誹謗中傷を言われる。

確かにさ、冒険のときで怪我させたりしたかもだけどさ、この言い方は危なすぎる。


「てかやめろ。さっきから2人の視線が辛いんだよ。ご近所さんにも聞かれてるだろ!」


ここだけえらく寒いんですけど、0度切ってんじゃないの?というか、昨日の今日でまた警官に怪しまれるのは言い訳できない!


「わかったから、わかったから。早く行くぞ、使えないお前でもいいから!」

「ふっ、少し気になる言葉はあるけど、黙ってあげましょう。さあ行くわよ」


やっぱ女ってずるい。


「とりあえず、あなたが女を泣かせるのが趣味ってことがわかったわ。だって、この前も泣かされたもの」

「えっ、本当に酷い人なんですね....。」

「私だけじゃなくて、他の人にも....」

「少しは、俺の心中も考慮してくれよ!そうしたらプラスマイナスゼロじゃん!この話は終わり、さっさと行くぞ」

「あ、この人逃げたわよ。待ちなさい、まだ話は終わってないわよ!」


俺はこの話題を無視し、先へ急ぐ。


「ところでさ、ティアはどう強くなったんだ?」

「この鎧見てください、フルプレートですよ。めちゃくちゃ固くなりました!それと剣も少しいいものに変わりました。」


とても興奮して話されているが、俺にわよく分からない世界だなぁ。しかも戦士の強化って案外地味だし。


「お前は、いつも真面目だなぁ」

「ああああ、空さんが褒めました!槍が降ってきます。姿勢を低くしてください!」

「酷くない?!」

「あ、ツンデレの方でしたか?間違えました。」

「何度も言うけど、男のツンデレは需要が薄いと思うの。」

「誰がキャラ作りだ、お前らの褒めるところが少ないからだろ。もうちょっと堅実に生きてくれよ。」

「でも、初めて会った時に私の胸見てたけど、そこは褒めないの?」


そんな前のことを、確かにいい体だなって思ってたけど。


「み、見てねぇよ」

「嘘おっしゃい。女ってそういう所分かるのよ。」

「.....人生の汚点だ」

「泣くほど?!さすがに私もショックを受けるんだけど」

「男の人ってエロいのがバレたら悲しいんですか?」

「そうよティア。男っていつまでたっても子供だから、エロいことはバレたくないし、好きなことも隠したがるのよ。」

「そうだったんですか!」

「あと、親しげに話してたらそのうち告白してくるわよ」


おっと、普通の人とならそうなっていたが、それは聞き捨てならんな。


「ごめんな、セリナ。お前のことは可愛い犬に抱く感情しか沸かないんだ。ごめんな。」

「なんで私が振られたみたいになってるのよ。」

「え?俺が好きなのはお淑やかな子なんだ。お前は、そこんとこどうなんだ?口の周りにご飯着いてたり、良くうるさいし。何を見てお淑やかなんだよ。」

「あなた言ってたじゃない。人は一部分で見ちゃダメてって。」

「確かにそうだけど、全部分で見てもOUTだと思うぞ?」

「なによー!」


犬を黙らせつつ、門へ向かう俺達だった。

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