第22話 前科持ち

危うく死にかけた俺は、このこのアホに今にも食い破らんばかりの怒気をぶつけていた。


「お前どこが成長してんだよ!人殺しスキルでも手に入れたのかよ!」

「なによ!階段を上る前に助けてあげたじゃない!」

「お前.....あれはノーカンだよノーカン!」


確か雷系だっけ?サンダーだっけ。体の内側から燃やされるみたいで、肉の気持ちがわかった。


「とりあえずありがとな、本当に危なかった」

「分かればいいのよ。男キラーの空さん」

「ん゛っ.......お、おうよ」


危ない、いつもの流れになる所だった、こんな奴でも一応は助けてくれたんだよな、感謝しないと。ひっじょうに不服だし、殴りたいけど。


「それよりどう?男とか好きになった?目覚めた?ねぇ教えてよ。」

「おっまえ、人が我慢してたら調子に乗って....、軽くトラウマだぞあれ!性犯罪にあったことあんのかよお前!なんなら今から合わせてやろうか!」


あれは本当に怖かった、正直あの鼻息の感触が忘れられない。しかも、力強すぎて全く振り解けなかったし。


「そんなの、今までずっと一緒に寝てた空さんが、出来るわけないじゃない。それどころかいやらしい店にすら躊躇してるのに」


こいつ!


「お前、その事は黙ってろって言ったろ?買収したじゃん。絶対他のやつの前で言うなよ。」


あれはほんの出来心なんだ。決して俺がエロいとか、俺がヘタレとかそんなことないからね?ただ単に紳士に生きようとしてるだけだからね?


「ていうかそこで転がってるあいつ、警察に突き出した方がいいよな?俺、触りたくないんだけど。」

「私だって嫌よ。この人ダメな匂いがするもの。」

「ほぅ、体臭って気づかないと思ったが、案外気付くもんなんだな」

「それってどういう意味よ。私が使えないって言いたいの?」

「自覚がないとはびっくりだ」

「ぷぷぷー、私がものすごく強いわよ?だって新しい魔法を覚えたんですもの。そこに気づかないとはあなたの頭も成長してないみたいね!」


どうやらこいつは、いくら強くなろうとしても成長しないらしい。例えば、サバイバル知識を覚えたのに、その機会が出てきても使えないって感じ。まさにこいつはそれ。


「でも、当てられなかったらいくら魔法覚えても意味なじゃん。無意味って言葉知ってる?」

「あんたこそ、そんな見た目を盗賊っぽくしても意味ないってこと知ってる?宝の持ち腐れよ?」


こいつは1度、わからせたほうがいいらしい。


「よし上等だてめぇ、街の外こいや。1度徹底的に泣かしてやる」

「相性って知ってる?基本尻拭いしか出来ない、裏方のあんたと火力担当の私のどちらが強いかなんて、誰が考えても明白よ?」

「後で泣いても知らないからな?」

「服を新調することになるかもね!」


俺だって新しいスキルを教えてもらったんだ、こいつに遅れをとることはまず無いだろう。

どう泣かしてなろうか考えていると、2人の方に唐突に手が置かれる。


「あのー、警察のものなのですが」

「「こいつがいきなり襲ってきました」」


これはやばい、約束のクエストがあるって言うのに今捕まるのは、本当に宜しくない!


「違うんです、こいつは1度魔法を撃ってきたんですよ。しかも結構強いヤツ」

「それは本当ですか?だとしたら、あなたの方から仕掛けたのですね。」


セリナもこれを聞いて焦ったのか、必死に身振り手振りしながら言い訳をする。


「こ、この人の方が先なんです!ただ話してただけなのに、私の美貌に目がくらんで性犯罪に合わすぞ、とか言いながら襲ってきたんです!」

「えぇ?!あなたこんな真ん中で何をしようとしていたのですか?それは行けないあなたを連行させてもらう。」


や、ヤバい。この国の警察はなんて出来ている人なんだ。

性犯罪と聞いて顔色が変わる警察の人。


「襲ってないですって、誰がこんなこんな女に!いくらなんでも、言っていいことと悪いことがありますよ!なら見てくださいこの服。簡単に脱げないし、こいつの服も乱れてないでしょう!」

「た、確かにそうですね。見た感じ嘘を言ってないみたいだし、さっきの失言は失礼しました」


お、いいぞいいぞ。この国の警察はなんて出来た人なんだ!俺、冒険者を辞めたら警官になろうかな。


「ちょっと、失礼しちゃわないでよ!それ私にも失礼じゃない?違うんです、この人が襲ってこようとした時に魔法を撃ったから乱れてないんです。」

「な、なるほど.....」


こいつぅ!土壇場で頭が回るようになりやがって、この調子で戦闘とか出来ないのかよ。あれか、痛い目を見て学習するタイプのバカか。


「そんな訳ないでしょう?!信じないでください!そもそも大通り出するわけないでしょう。」

「そ、それもそうですね。ではこちらのお方を」

「よ、よく見てちょうだい!この人服装乱れてますよ!」


あ、やべぇ。さっき襲われたばっかりじゃん俺。これじゃあ言い訳なんて出来ないじゃないか。


「ち、違うんです。これはあいつが撃ってきたからなんですって!」

「もういいです、埒が明かないので2人共署に来てください。」


やばい!捕まる。こんなんじゃ本末転倒だ。お母さん、すいません。私は異世界で前科持ちになるみたいです。チート持ちじゃなくて。

もう無理かと慌てていると、変態が目を覚ます。


「ちょっと待ちたまえ警察の人。そこの空くんは悪くない。悪いのはそこの女の人だ。だから、僕の顔を立ててくれると思って、空くんは許してくれないか?」

「そうですね、この街でも有名な隼也さんです。ではこの女の人を。」

「ちょ、ちょっと待ってよ。本当はね」


この状態で、2人きりになるとか本当にやばい。多分押さえつけられて.....親に顔向けできなくなる!

俺はセリナに目配せをし、頷きあうと、誰を犠牲にするか決める。


「「本当はこいつが真犯人です。」」

「え、ちょ」


1から事情を説明し、ただの喧嘩だったんですと弁明し笑われた俺たちは、強姦魔が逮捕されていく様子を眺めていた。


「これで一件落着ってね」

「そうね、久々の無傷の勝利だわ」

「いやいや初めてなんじゃないか?」

「「HAHAHAHAHAHA」」


いやぁ、無事終わってよかった。しかも警察の話では事情聴取した後しかるべき処置が言い渡されて、恐らく別の町へ輸送されるらしい。


「ねぇ、後の二人はどうなっているのかしら?」

「そうだなぁ。ティアは安心できるがグレアがな。あいつ、絶対なんかやらかしてるぞ」

「そうかしら?」


どうやら、本当に同族の匂いは分からないらしい。

でも、本当に強くなって帰ってくるだろうか。嫌な予感がしてならない。


「まぁ、なんとかなるでしょ?いつもだってそうなって大丈夫だったし。」

「お前....、俺の心配とか準備の大変さとか、フォローの難しさとか分かってくれよ?まぁ大丈夫だろうけどさ」

「もしかしてツンデレ?いっつも馬鹿にしてるけど。男のツンデレは流行らないわよ?」


俺、パーティやめようかな。涙出てきた。


「少しは分かれってことだよ。こんな残念なやつに囲まれて、いつ壊滅するのか分からないパーティで冒険して....。」

「なーんだつまんないの。っていうか使えないって言った?!また言ったの?!」

「なんも言ってないよ。ほら店行くぞ」

「ねぇ!」


とんでもない傷を負った俺は、時折後ろを気にしつつ店へ向かうのであった。

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