第20話 詐欺

「ねぇ師匠、いい加減あんな教え方やめません?いい加減痛い目にあうの辛いんですけど」


俺は、初めてスキルを教えて貰った際も同じように穴へ落とされ、目くらましをやられ危うく死にかけた。

そんなことをボヤいていると、バツが悪そうにしている師匠。


「それは悪かったよ。でもそのおかげで私は楽しみて幸せ、あなたはスキルの使い方を学べて幸せ、どう?win-winでしょ?」

「いや、こっち結構loserでしょ。師匠は1度弟子をいたわった方がいいっすよ。」

「やっぱ君は退屈しないね。教えてよかったよ。これからもどんどん遊ばせてね!」

「こっちだっておもちゃになるつもりは無いっすよ。いつか泣かせますからね」

「やれるもんならね」


なんだろうこの関係。一緒にいてすごく楽しい。これが良い師弟仲というやつなんだろうか。あいつらにも見習わせたいよ、まったく。


「というか、師匠は普段なんしてるんすか?全く街で見ないんだけど」


ビクッと体を震わせる。するとアハハと誤魔化すように笑う。


「まぁちょっとね。君が強くなってから話すよ。その時はよろしくね」

「え、なんすかそれ。俺もう面倒事とか勘弁なんすけど。そういうのは家のパーティだけで十分ですよ。」

「はいはい。多分君は逃げられないよ」


俺は、これからどんな辛いことが待ってるんだろうか。俺はもっと、平凡な異世界生活を送りたいんだけど。どうやら周囲が話してくれないらしい。見方を変えれば人気ってことかな?そんな人気願い下げだが。


「そんなことより、なんかいい道具屋教えてくださいよ。俺も無双したいんスよ」

「何も奢らないわよ?」

「いいじゃないすか、俺あんたに取られてお金があんまりないんすよ。」

「そういやそうだったね。しょうがない、今回だけよ?」

「先輩素敵っす。結婚してください」

「はいはい、あんたがもうちょっとイケメンだったらね」


冗談なのに、真顔で言われてしまった。俺、そろそろモテても良くない?頭いいし、フォローできるし、紳士だし、そこそこ顔良いし、期待の新生だし。

自惚れじゃないよな?


「ほら、あそこだよ。店主がウザイけどいい品物は入ってるよ」

「えぇ、ほんとにまともなもん仕入れてんの?例えば触ると魔力が回復するけどやりすぎて体が爆発するとか、そんなんじゃないよな?」


俺は学習したんだ。この世界には、頭のヤバいやつらが沢山いるって、そして俺がなにか厄介事に巻き込まれるんだ。


「じゃあ行きましょうか」


嫌だなぁ。


「おーっす店長さん。新米連れてきたよー」


店内へ入ると、以前訪れた店とは違い、怪しげなもので埋めつくされていた。俺からしたら、大抵の魔道具はやばそうなんだけど、ここは特に紫っぽいというか、中2心をくすぐられっていうか。


「お、早速ジロジロ見てんねお客さん。カモになりそうなお客さんじゃないか。いらっしゃい」

「いきなり詐欺師宣言とか、舐めてんのかこいつ。俺はほかを当らせてもらう」

「ちょっとまってよお客さん!ほら、これみて」


そう言って見せてきたのは小さい玉。中になにか詰まっているようで、何かが動いている。


「これをね、こうして投げるとなんと魔物避けになるんです。」

「くっさ!何かけたんだよ!」

「えーと、腐った肉のエキスに腐った野菜のエキスに腐った卵だ。」

「腐りすぎだろ、こんなんじゃ俺まで腐ってるみたいじゃんか」

「あってるわよ」

「師匠でも言っていいことと悪いことがあるぞおい。」


でもほんとにくさいな。臭すぎて人間も離れていってるじゃんか。


「これちゃんと匂い取れるんだろうな。」

「取れるわけないじゃないですか。強力なやつなんで」

「おいなんて言ったお前」

「取れないって言ったんですよ。だからおすすめしたいのがこれ!盗賊の服です!」

「お前ほんといい商売してんな」


師匠から一旦お金を借り、一式を買うことにした。

黒を基調とした服で、近いもので忍者服のような感じだった。


「かっこいいんだけどさ、特にフードとか入れ物ケースとか。腰にある短刀入れとか」

「気に入って貰えて何よりです。その服は凄いんですよ。音も立ちにくい設計ですし、多分夏も冬快適だと思いますよ。」


確かに、何故か程よく涼しいし。いい買い物をしたのか?嵌められた感があるけどまぁいいや。

きっとこうして、儲かってるんだろうなぁ。


「どうしよう、道具買いたかったんだけど」

「じゃあこれなんてお手軽だよ?透明になれる薬なんだけど」

「男の夢じゃないか!1000個くれよ」

「あいよ。でも自分の体しか透明にしかならないし、効果時間もまちまちだけどな」

「下手したら素っ裸って事かよ。要らんわ」

「まぁ1個持っていきな。初心者への餞別だ」


正直いらない。これじゃあ覗きも出来ないし、ムフフなことも出来ないし、犯罪できないじゃないか!しないんだけどね?


「まぁ、貰ってくよ。ありがとな」

「またかもられに来るのを待ってるぜ」

「じゃあ私はそれを見に来るよ」

「お前ら俺にそんなことして酷くないか?!心が痛まないのか?」

「「盗賊にそんな事言われてもねぇ」」


この職業の奴らは、こんなのしか居ないのかよ。こんなことなら戦士とかになって、格好よく訓練とかしながら鍛えた方がマシだったか?運動嫌いだけど。


「じゃあなクソッタレなやつら」

「あいよ」


なんか、強くなるための道具を探しに行ったのに、どっと疲れたよ。どこかに俺を癒してくれる物はないのかね。たとえば妹とか。


「なんか疲れた顔してるね。もしかして体力ないのかい?盗賊のくせに」

「うるせぇ、濃いことがありすぎて頭が混乱してんだよ」

「頭、弱いんだね」

「いいだろう、さっきから喧嘩売ってるなら買おうじゃないか」

「お、やるかい?私にはまだまだ手札があるんだよ?」


ぐぬ、考えたらこの人ベテランじゃん。あまりにも風格がないから忘れてたわ。


「しょうがない、今日のところは見逃してやるよ。」

「そうするといいよ。きっと挑んできたらイモムシになってたしね。」

「いよいよ悪魔みたいだな」

「悪魔か、言ってくれるじゃん。よーし、覚悟しなさい」

「いやー今日も美しいですね。ほんと天使みたいです」

「天使も若干嫌だけど、許してあげよう」


どうやら許されたようだ。てか、なんか後ろに持ってるし。なんだあれ....ロープ?!芋虫ってそういうことかよ。危なかった、アレで簀巻きにされたら何をされていただろうか。


「ところで、師匠はいつも何してるんです?あまり見かけませんが」

「私はね....ちょっとね」

「まさか犯罪に」


通報しなきゃ。


「違うって、ちょどこに駆け込もうとしてるの?!ほんとにそんなんじゃないから。正義だから!」

「義賊でもやってる?」


師匠の動きが止まる。どうやらあたりのようだ。


「バレちゃあしょうがない。君にも手伝って貰うよ」

「あーあー聞こえない、聞こえない。私は何も聞かなかったし質問もしなかった。」

「まぁいいさ、いずれやるだろうし」


さっきのこともあって、やらされる未来が見えてきた。どうしよう、この街出ようかな。

どうやって逃げるか考えていると、不意に声がかけるれる。


「もしかして君は、日本人かい?」


そこには、黒髪黒目の優男が立っていた。どうやら戦士のようだ。腰に派手な剣をつけている。


「もしかして、あの女神に呼ばれたひとかい?」

「なんなのこの人、いきなり声掛けてきて女神に呼ばれたとか、厨二病?痛いわね」

「確かにそうだけど....日本人なのか?」

「厨二病のつもりは無いんだけどね。俺は生まれも育ちの日本で、異世界に飛ばされた1人さ」

「やっぱ居たい横の人」


こんな反応をされて当たり前だろう。いきなり異世界とか女神とか、にわかには信じられないもんな。


「とりあえず師匠。こいつの話聞いてるんで逃げといてください。」

「分かったよ、ご武運をね弟子君」


めんどくさいものに巻き込まれたくないのか、師匠はダッシュで逃げていた。

あの人ほんと見捨てるの早いよなー。

でも、同じ境遇の人かぁ。ん?同じか?こいつはどうやら剣が派手なところを見るに、チート持ちなのだろう。だったら敵ではないか?俺から楽ちんな道を奪った敵だろこいつ!


「よし貴様、ここであったが100年目だ。1発殴らせろ」

「名前も聞いてないのにいきなりかい!」

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