第17話 勇者への褒美は
「あああ、俺にもとうとう素敵なイベントが回ってきたか」
苦節数週間、始まりは拉致、そしてポンコツなメンバーと会い命の危険にさらされながら何とか生きながらえ、どうにかこうにかたどり着きました宝の前!
「じゃあ、あけるぞ」
全員が喉を鳴らして、扉の先を見つめる。そこには.....
「あれじゃん、見るからに伝説の剣じゃん」
辺りは、今までとは違う黒い鉄でできた床。その中央には剣が刺さっていた。
「あれね?選ばれし者しかうんたらかんたらのやつね」
「これはこれは、すごい魔力を感じるわね。多分そこら辺の武器の数倍もあるわよ」
「剣ですか、私が引き抜いてみていいですか?」
ティアは、恐る恐る引き抜くために近づいていく。そして、剣の柄に手を伸ばし力を加える。
「ふん、ふん!ぐぐぐぐ.....っはぁ抜けませんね」
怪力虚しく全く抜けない。数分後、諦めたのか疲れた表情で座り込む。 そしてよく聞く不正解の音が鳴り響く。
『ブブー』バーン
ついでにたらいも落ちてくる。
「ちょ、なんなんですかこの剣!伝説だからって調子に乗ってるんですか?!」
「無機物にあたるなって....、そういうこともあるさ」
ガツンガツンと、剣を蹴るティア。荒れすぎだろ.....。
「どうする?私たちは使わないし、部屋の探索してるわね」
「ティアは残念だったわね。あ、あんた早く引き抜きなさいよ。」
「おい、その扱いの差はなんだ。......まぁ、俺が引き抜いて後悔させてやるからな」
「あなた、そう言って成功したことある?」
「・・・・ないけど。」
「ぷっ」
この女は!いつか寝てる時に埋めてやる。
さっきは勇者のような活躍だったが、判断基準はそこではないらしいし、引き抜くか。
「まぁ見てろって」
女神以外の神さま、俺に力を。
剣の柄を握り、力を込めるといきなり剣が光を帯び始める。
「うお、遂に無双が始まるのか?!俺にも?!」
「あんた、いつの間にそんなにことになったのよ。その手を離しなさいよ!」
「見た目に反して将来有望だったようね」
「うぅ、負けました」
徐々に剣を引きぬいていき、どんどん光が溢れてくる。抜き終えると、剣がふわりと浮いていく。
あれか?剣に宿る妖精が俺と喋るシーンね。そういうパターンね。
『------っぷはぁ!なんやなんや起こしてくれたんか!』
は?
全員が、拍子抜けとばかりに、ダメなものを見る目で見ている。
『お、べっぴんさんばっかりやんけ!どの子が起こしてくれたんや?』
「俺ですけど」
『あ?キャラ作る必要もなかったか。気分下がるわ。』
なんだろう、このての気配は浴びるほど感じてきたからわかる。駄目な聖剣だコレ。
『お?あんちゃん、ダメとは失礼やなダメとは。これでも昔はブイブイ言わしたんやで?』
「頭の中読めんのかよ、面倒なやつだな。チェンジで」
『はー?』
俺たちが剣と喧嘩していると、女性陣からはなにやらヒソヒソ話していた。
「どうしようかしら、あの残念なやつ」
「私はいらないですね。外れてほんとに良かったですよ」
「もう空に押し付ける?」
「そうしましょう。私あんなの使いたくないです」
「そうね」
「おいテメェら聞こえてんぞ。俺も要らないからな」
ほんとにこんなのが強いのか?俺はゴメンだね。
『黙って聞いていれば、酷い言われようやな。というかついて行く気はないで?俺には俺の剣権があるんや』
「なんだコイツ、ダジャレなんておっさんかよ。ていうか使われろよ」
『綺麗な姉ちゃんが相手してくれるならええけど、転生者がこんなんじゃわいも嫌やで。じゃあ行くから』
解放した時のような光に包まれると、不自然な足がニョキっと生えてくる。
『ほな!』
そのまま走り去ってしまった。
「結局宝は無しかよ。」
「仕方ないけど、そういうこともあるわね」
「ねぇ、これみて。なにか書いてあるわよ?」
どれどれ、日本語か?
「見たことない文字ですね」
「これ日本語か?」
「読めるの?!」
「ま、まぁ」
どれどれ.....。
〖ここに、我が傑作について記す。始めに書いておくが、出力は傑作なのだが性格がカスなことを許してくれ。だが聞いて欲しい、私の苦労の日々を〗
「おい早くやれよー。チートあるんだろ?おっそいなぁ」
いつものように精霊が急かしてくる。この世界の精霊は、取り付く道具を用意しないとうるさいから、どうも好きになれない。
「おらっ!早くしろよ!」
後頭部をがしがし蹴られる。
美人だからいいんだけどね?足とか好きだからいいんだけどね?
それから3週間がたった。ようやく派遣していた冒険者が、素材が集まったらしく、剣を完成させることだ成功したこと。
あ、私チーターなもんで材料さえあればすぐ作れるんすよ。俺すげえええ!
「じゃあ、これでよろしく」
「お、なかなかいい出来じゃねぇか。じゃあ早速」
でも、散々罵倒されて蹴られたんだから逆襲してもいいよな?
精霊が中に入った頃合を見計らい、俺は瞬間的に封印装置を作り、そこに差し込む。
「ありがとう精霊。君の足は綺麗だったが、どうにも臭かった。そこで眠りなさい。」
ということで、引き抜く日と後はよろしく。あとホモじゃないよ。
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「おいなんだこれ、解き放っていいやつなのか?」
「いい?私たちは何も見なかった。いいわね」
「珍しく気が合うな。忘れることにするよ」
いいね?何も見なかった。いいね?
俺たちは、疲労感を感じつつ家に帰るのであった。
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