第58話 片付けてくる

行き同様にバスを使って家まで向かう。

学校の生徒だと菜月の銀色の髪はもう見慣れているので、そこまで視線を集めることは無かった。

しかし、初めて見た人は男女問わず振り返ってしまう。

菜月は髪が銀色なだけでなく、蒼い目に整った顔立ち、胸は出ているのに腰は細い。

モデルのような容姿でありながら高校の制服を着ていれば目立たないわけがない。


そんな中やっぱり隣の俺に視線を向ける人も多くいた。

まぁそんな美少女の隣に顔面偏差値30の男がいるなんて普通有り得ないもんな。

最近はモテるためではなくて、隣に立っても恥ずかしくないようなイケメンになりたいと思うようになった。

最近やけに美少女の兄妹なり友達なりが増えたからな。

そのうち隠れファン的な何かに襲われるかもしれないな。

急に登下校が怖くなってきた。


そして俺たちは家に着いた。


「ここが晋也の家?」

「俺の家って言うか義父さんの家だけどな。まぁ親はいないから気にせずに入ってくれ」

「……う、うん。お、お邪魔します……」


菜月は俺の家を見て口をパクパクさせて言葉を失う。

まぁ初見ならば誰だってこうなる。

ちなみに俺もほぼ同じだった。

高い天井にリビングから見える広い庭、調度品のような家具の数々は、一体いくらするのか謎である。

誠二さん金持ちすぎじゃないか?


一応両親は今いないが、夏帆はいるのでリビングで遊ぶのはやめた。

夏帆が帰ってきてリビングを使うとしたら邪魔になるからな。


「ちょい待ってて、部屋軽く片付けてくるから」

「うん……(晋也の部屋……初めてだ。)」


かつてよく遊んだ二人であったが、晋也が菜月の家に行くことは頻繁にあったもののその逆は無かった。

理由としては2つある。

1つ目は母がいつも仕事でいなかったからだ。

何かあったら大変だからと言われていたので、誘わないようにしていた。

2つ目は純粋に家が狭かったからだ。

俺が当時住んでいたのは格安賃貸のアパートだ。

勿論がんばって俺を育ててくれた母に対して責める気持ちなんて微塵もないが、やはり狭かったことに関しては少し不便もした。

まぁこんな理由から今の状況が出来上がったのだった。

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