第26話 帰り道
その日は結局最後までサッカー部の練習に参加した。
解散したのは7時を過ぎていた。
帰ろうと部室から出ると夏帆が待っていた。
「あ、晋也。おつかれ」
「あぁ、先帰っといて良かったんだぞ?」
「私が待ちたかったから待ってただけだよ。気にしないで」
「ありがとな」
「うん……」
サッカー部の練習自体が終わったのは6時すぎだった。
そこから片付けやミーティング、着替えなどをしていて今の時間にいたる。
そして片付けのときに既に女バスは解散しているのを見た。
つまり夏帆はわざわざ一時間近く待っていたことになる。
まだ5月の終わりなので夏ほど暑くはないが、そこそこは暑いのだ。
申し訳ない気持ちとありがたい気持ちが同居している。
二人で暗くなった道を歩く。
「晋也サッカーあんなに強かったんだね」
「まぁサッカーは本気で努力してきたからな。取り柄はサッカーくらいしか無いよ」
「……ねぇ晋也、あの時、盾を割っちゃったの本当にごめん」
「もう許してるし怒ってないって。しっかり条件の通りに家族になってくれたしな。今日も一時間近く待っててくれただろ?」
「待ったのは条件だからじゃ無いもん……」
「ん?なんか言ったか?」
「な、なんでもないっ!」
そうして俺たちはお互いに無言になってしまう。
気まずくて夏帆をちらっと見ると目線が合ってしまう。
お互いにすぐ目を逸らす。
それがなんだが面白くて二人で笑った。
帰るまでバカみたいに笑った。
通りすがりの老夫婦が
「いいカップルね~。若い頃を思い出すわ」
とか言っていたのも気付かないくらいに笑って帰った。
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