九月二十二日

・ほうほうの体 あわて逃げるようす。

・取り持つ 両方の間にたって話をまとめる。

・醍醐味 物事の面白さ、深い味わい。

・悪銭身に付かず 悪い方法で手に入れたお金は、残らないものだ。

・レトロ 昔風で懐かしさのある様子。

・お歴々 地位、身分などの高い人々。

・あざなう 糸をより合わせる。

・剽窃 他人の文章を盗み使うこと。

・天賦 生まれつきの素質。

・甍 屋根瓦。

・常住坐臥 いつも。普段。

・消長 勢いが衰えたり盛んになったりすること。

・傍証 間接的な証拠。


主人公は「俺」である。


―――帰宅最中に土砂降りに逢い、ほうほうの体で近くの喫茶店に逢着した。

そもそも、今日は模試前なので家のネット教材を使って勉強をしようと考え、その前に行きつけの喫茶店へ直行してヨーロピアンスペシャルでも頂こうかなと寄り道をしていたところ、土砂降りに逢って近くの別の店で妥協するハメになったのだ。


行きつけの喫茶店は学生の俺には営業時間が適している訳ではなく、いつも閉店間近の少し前に入って飲食をするので今の天候ではとても間に合わない。

さらっと店内に入るときに外観をざっと見たが、蔵屋敷と古民家を彷彿とさせる外観に簡素な甍が付けられている。

どうもちゃっちいなぁと内心思いつつも店内は一変。洋風である。

いや、洋風と言っても少し語弊があり、レトロ調な......具体的には皮のソファーや黒色で店内が統一されている。


あ、アンティークというヤツだろうな。


ただ、「ちゃっちい」と思ったのは本当であり設備が無駄に良ければ客席が非常に多いのでチェーン店だなと合致がいく。


俺は基本的にこういう如何にも綺麗な?というより無駄に人工的な場所があまり好きではなければ、八つ当たりだが土砂降りが五月蠅い。


仮にびしょ濡れで行きつけの喫茶店に入っても、びしょ濡れで迷惑をかけてしまうかもしれないし、こんな轟音の最中に珈琲を楽しめる訳がない。


なので妥協だ。だがしかし、店の雰囲気はお歴々が頭を並べて御出でになるようなもの。まぁ高校生一人が突入しても問題ないだろう。





―――――全然問題なかった。

一応、店の隅の二人用のテーブルに座ったが周りには中高生が多数。

だが、男女のペアが非常に多い。

ス●バとか人が多いところを避けて、こういう場所に来るのか~と無駄な知識を頭に入れつつも、土砂降りだし偶然だろうなと淡く捉えた。

甘みが強いオリジナルの品らしいブレンドコーヒーを店員さんにオーダーすると、隙間時間なので勉強......はやらずに、書き途中の小説のプロットをルーズリーフにシャーペンで書き殴る。


・・・暫く書いてざっとプロットの一部を注視すると、やはり自分の癖が出てしまっているなとしみじみ感じる。


剽窃とそのような汚い語彙を使うレベルではないが、自分が読んだ他作品の表現がそのまま似たような形で自分の設定や文章に流用されているように思えるのだ。


オマージュという自分の独創性と他者の独創性をあざない、良い按排で取り持つというのが難しい。

自身の天賦であるかもしれない「独創的の無さ」を補填するために一々やるのも長くは続かないだろう。

読者の一部が傍証を提示でもすれば、作品はもちろん俺自身も瓦解する。

執筆速度も他作品のものに似てるか似てないかの判断を行うと、だんだん消長していくし......


耽っているとブレンドコーヒーが到着した。

常住坐臥嗅いでいたい程、香ばしくもやや苦く鋭い匂いが鼻腔を刺激する。


人生の醍醐味ってヤツだろうな。


小説書きもこのくらい楽しめたらいいのに。

最近は義務感でやっている。これは「仕事」か?と。

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