九月二十日

・諸般の事情 いろいろな事情、要因や背景。

・駆る 追い立てる。

・十年一日 いつまでも同じ状態が続くということ。

・遜色ない 見劣りしない。

・広義 ある言葉の広い意味。

・上前をはねる 他人に取り次ぐ代金の一部を自分のものとする。

・付け焼き刃 その場をごまかすために急いでおぼえたこと。

・噂をすれば影が差す 人の噂をしていると、ちょうどそこへその人が現れることがあるということ。

・箴言 いましめになる短い句。

・沙汰やみ 命令や計画が中止になること。

・演繹 一般的なことをもとに、確実な結論を出す方法。

・アフォイズム 物事の真実を簡潔に鋭く表現した語句。

・伝 方法。

・暇に飽かせて ひまがあるのをよいことに、多くの時間を費やす。


主人公は高校一年生の「俺」である。


―――そういえば、生徒会役員に立候補したんだ。

何故かって?そりゃあまぁ諸般の事情が諸々あるけど、十年一日の如く目立った刺激のあることをせずに日常を唾棄するのはもう御免だっていう抵抗感が大きいね。

後は単に暇に飽かせてだろうか。

自分を鞭でも何でも使って駆り半分は学校の為と身を焦がし、もう半分は自分の信念に沿った経験の吸収を貫く。

「いいね。とってもフェアだ」と考えて決定した。


まぁ、でもなれるかどうかは殆ど分からない。

条件として自分の高校はそこそこ人数が多く、立候補者も多いと前々から予測している。更に、それを確定させるデータとして、生徒会役員の立候補者の名簿に自分の名前を書く時、名簿から確認出来た他の立候補者の名前の数が相当多い。

しかも一年生内でだ。

加えて、俺は逆風が強いのかもしれない。

何故なら俺は部活動に所属しておらず、そもそも目立った人間ではない。

知り合いの先輩も生徒会の立候補関係で関わった数名のみであり、友人も少ない為に人脈はほぼ皆無。

ただ、唯一の救いとして「校内でのある事件というか事故に巻き込まれた張本人」というのと「進研模試、校内模試での校内順位が上位であること」である程度には知名度があるはずなのだ。

―――自惚れだ。信じるなよ。


これでこじつけで無茶苦茶だが、±0だと仮定して基盤を自覚する。


次は役員になる為にすることのプロセスだ。

これは考慮する範囲は演説でしかないだろう。

まず、第一印象である「顔」。この遺伝的な印象に関しては、自分がいつも付けている眼鏡を外せばそこまで他人と遜色ない顔になるが欺瞞行為でしかないだろう。

印象操作は世の中の事象から演繹として考えた結果、やはり第一印象はどうしても大切だが、後々沙汰やみなどの影響が出ても困る。


―――――それなら、もう全ての手の内を曝け出せばいいじゃないか。

最初は第一印象を良くする為に眼鏡無しで演説、演説の最後に「第一印象を良くする為でしたが、実際普段はこんな感じなんです」と眼鏡をかけて補足すればいい。


これだと、俺は何も悪くならない。

後々、他人が噂をすれば影が差す真似を影が薄い俺が見つけて気まずくなるような面倒くさい事象の回避も容易だ。


最後は演説の内容だ。

「なりたい理由やマニフェスト」などの骨組みは組み立てるのが非常に楽だが、大事なのは「装飾」だ。


ある程度分かっているのは、大衆はほとんど演説を聞いていないのだ。

何故なら、「自分に関係がない」からだ。

そこまで娯楽的な要素もないし、共感を促す要素も薄い。


つまらないのだ。


つまり、一番大切なのは如何に人を「巻き込める」かだ。

巻き込む中で肝心なのは、「影の具現」だ。

単に言えば「美辞麗句なんてクソくらえ!!!」だという意志の主張を堂々と叩きつけること。

更には、大衆の認知度がありそうなアフォリズムを用いて輝かせ、広義に解釈が出来て分かり易い言葉を乱用する。


今は、これらの策でいい。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます