九月八日

・抜け駆け こっそり先に飛び出して、てがらをたてること。 outrun

・身上 その人に関係あること。 career

・とめどなく とどまることなく。 endlessly

・呼応 たがいに意志が通じていること。 agreement

・薄利多売 利益を少なくし、たくさん売ることでもうけること。 low-margin,high-turnover

・屈託する 疲れて飽きる。 worry

・一事が万時 一つのことを見れば、他の全てがわかるということ。 One instance shows all.

・叩けばほこりが出る どんな人にも欠点や弱点があるものだということ。 Every man has his faults.

・冥土の土産 死んであの世に持っていくもの。 good memory

・大道 人の行うべき正しい道。 the great principle

・象牙の塔 学者や芸術家が世間から離れて研究や創作に打ち込む場。 ivory tower

・而立 三十歳。 thirty years old

・妙境 景色などのすぐれた土地。 beautiful place

・ダブルスタンダード 対象によって判断の基準を変えること。 double standard


―――ああ、憂いだ。


今自分がいる場所は山吹色の空の下、駐輪場で自分の通学用の自転車のサドルに、髪を掻き毟りながら頭を強く押し付けている。


顔を少し上げ、両手に引っかかった黒色の髪の毛とそれに付着した少しの皮脂に一瞬目をやり、衝動的に周りを見渡すと今年で三十而立の物理の先生が此方を奇妙そうに眺めており、冷然を装い会釈で返した。


先生から目を離すと同時に、帰宅の準備をしながら一人自己嫌悪に浸る。


―――最近、俺は自己満足の勉強しかしてないのではないのか?


初夏に受験に関して意欲を示し、同級生が一人もいない静かな会議室で勉強を行い、とめどなく溢れる「学力の向上」という欲求を表面上は、それを疑似的に俺が発しているものではなく真の気持ちだと錯覚させ、自分を欺いた俺は裏腹に「抜け駆けして頑張っちゃってる俺カッコいいなぁ!!!!!」とかいうくだらない蛆が湧くような思考を抱き続けていたのではないだろうかという疑問が生じている。


今の心象風景は......なんだろう。

妙境に一つだけある狭いマンホールに一人だけ突き落とされて幽閉されたような感じか。


実際、確かに学力の向上は確認できたのだが、この薄汚い滑稽な矜持を持っている俺が存在することが確かなら、一事が万事これ以上伸びることはないだろう。


―――そもそも、このような事実を突きつけられた原因は何だったのか。


九月になって会議室で勉強する同級生が急激に増加したことに加え、呼応している訳でもないクラスメイトが会議室関係でよく絡んでくるようにつれて自分のペースが乱されている事を自覚したのが根本的原因。


求めるはその派生・・・


人関係だが、これ以上書けば誹謗中傷になりかねない要素があるのかもしれないので完全にカット。


兎にも角にも、本末転倒で全く売れない商品を薄利多売の販売方法で、繕った笑顔で偽善者ぶって「タダだとちょっとねぇ...」と言っているが、裏では利益に固執している人を遠くから眺めているような気分になるのだ。


超絶抽象的なので要約すると、ある人の身上が好きにはなれなくて、それを自分の歪みの原因だと責任転嫁しているだけ。


一々他人にダブルスタンダードな考えしかできない自分を恨む。


結論的には、色々会議室で勉強すると屈託するのだ。


元々、会議室で勉強しようとした訳は「家だと欲で気が散漫するから」だったが、今は逆で「会議室で勉強すると屈託するし、努力を他者に誇示しているようで気持ちが悪いから家で頑張る」という思考パターンになっている。


上手く表現するのが難しいなぁ。


結局、勉学......派生して「知識」は冥土の土産なのだから具現化した象牙の塔にぶち込まれて死ぬまでみっちり吸収するのが一番なのかもな。


どうも、俺には大道を堂々と歩くのが出来ないようだ。









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