九月三日

・遠近法 絵画などで、遠近感を表す方法。 perspective

・欠落 一部分が欠け落ちること。 lack

・饒舌 おしゃべりな様子。 talkative

・花鳥風月 自然の美しさ。 beautiful scenes of nature

・潔しとしない 自分の良心や誇りが許さない。 too proud to

・越権 自分の権限をこえて行うこと。 arrogation

・定見 しっかりした一定の意見。 fixed opinion

・綱領 要点。政党などの根本方針。 outline

・気宇壮大 物事に対する心がまえが大きく立派なこと。 magnanimous

・往時 昔。 past

・帰納 特殊な事から一般的な法則などを見出すこと。 induction

・QOL クオリティオブライフ。人生、生活の質。 quality of life

・天の配剤 天は人それぞれに能力や機会などをほどよく与えるものである。 dispensation

・充溢 満ち溢れること。 overflow


俺は陰陽の狭間を彷徨う男子中学生であり、少女はクラスメイトの美術部部員である。


遠近法という絵画などで遠近感を出す方法が中々頭に入らない。

別に美術部に入っていたりだとか絵やイラストを日常的に描く訳でなないので、そこまで覚えなくてはいいと薄々自覚しているのだが、どうも覚えれないこと潔しとしないのだ。


往時といっても小学校の頃だが、大体形になっている絵を描けばそこそこの評価がされたり、勉強も簡単な問題ばかりなので容易に高得点が取れてするなどの甘い環境であったので「中学校」という少し高くなったレベルでも同様に振る舞いたいのも当然至極のことなのだろうか。


だがこのボーダーから天の配剤に従わなければならなくなり、例として努力やセンスなどの個々の育った環境やそこで培った感性が大きく現れたりするので結構厳しいものだと捉えている。


まぁこの現象の綱領として、大体俺の欠落した矜持が反映されているということと完全な偏見だということが挙げられるが、経験した人も少しはいるのではないだろうか。


このような変な矜持があるため遠近法を覚えようとしても、寧ろ逆に遠近法を考慮することを殆どせず、加えて面倒な色彩の設定も全て削った白黒な絵画を量産している。


今日も主観的にはそこそこの出来の絵が描けたと思う。


・・・ネクタイを締めるサラリーマンの絵なのだが。


ワイシャツのしわや、影なども自分の能力で出来る限り努力したし、色を殺すことで喪失感が出てやさぐれた感じになっている。


自分の絵を観察しながら修正点を模索していた時に肩を軽く叩かれ、後ろを振り向くと美術部部員の少女が右手で手招きをしている。


誘いに乗って付いて行くと、少女の絵を見せられた。

少女の絵は屋久島の縄文樹を連想させる巨大な樹木と、それによじ登ったりくつろいだりしている数多の動物が描かれている。

充溢した花鳥風月と、さが目立っているが。

歪さと言っても絵の一部分ではなく、全体だ。

消失点が無数にあるのだ。


―――歪さと言ったのは語弊があったのかもしれない。


兎にも角にも奇妙なのだ。


また、少女自体も饒舌な人物で絵の感想を激しく求めてきたり、更には気宇壮大な人柄なので、語彙力に欠けるがこのような変わった「迫力」のある絵が描けるのは当然なのだろうか。


このような人物の行動から才能のある人物の見分け方が帰納出来るのかも知れない。


・・・良いよな。QOLが高くて、毎日が充実してて。羨ましい限りだ。


一応、感想を求められているので部分的な定見を返すと、返礼ののような感じで自分の絵の指導をしてくれるらしい。


少女は自分の絵を見ると色について過剰に指摘したが俺も負けじと「鮮やかな色を使うことは自分にとっては越権行為なのだ」と堅苦しく返すと、難解な顔をして去ってしまった。


・・・可愛かったなぁ。

これだから人を困らすのはやめられないのだ。


幼稚な話なのだが。

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