高校一年:長月

九月一日

・能書き よいことばかりを並べ立てること。 boasting

・逆撫で わざわざ相手の気に障ることを言ったりしたりするようす。 irritating

・怨恨 うらみ。 grudge

・暗転 物事が悪い方に転じること。 change for worse

・満を持す 準備をしっかりして、その機会を待つこと。 be ready

・以心伝心 だまっていても気持ちが相手に通じること。 tacit mutual understanding

・同化 同じようになること。 assimilation

・思念 思い考えること。 thought

・散逸 まとまっていたものが、ばらばらになってしまうこと。 dissipation

・哀憐 悲しみ、あわれむこと。 pity

・意に染まぬ 気がすすまない。 reluctant

・刃傷沙汰 刃物で人を傷つけるような争いや騒ぎ。 killing affair

・アウフヘーベン 矛盾することを否定せず、より高いレベルで解決すること。止場。 aufheben

・懐刀 深く信頼している部下。 right-hand man


俺は一人の男子高校生であり、高校の生徒会の副会長でもある。


―――能書きばかりを並べるのが癖である俺は、それに加えて相手の感情を逆撫でする発言を繰り返しているが為、周囲の人からの怨恨は溜まりに溜まってとっくに限界を迎えていたと思う。


これは自分が関わる様々出来事が全て暗転しかねない、と普通に考えれば誰でもわかるようなことだが俺はこの状況を楽しむ為に作り出した。


よって、今日の高校の生徒会での会議も相当楽しかったのであった。


年に一度の秋の文化祭がCOVID-19の影響により全面的に中止となったが、文化祭の中のビッグイベントである、運動部全体が協力した迫力あるパフォーマンスなどの運動部を中心としたイベントを運営していた生徒会の組織の一部である「部活動連合委員会」が異を唱えた。


何とか自分達のパフォーマンスを学校に訪れるつもりであった人々に見せてあげられないかと。


確かに、毎年の秋頃は一学期からだらだらとしていた生徒達が纏まり、一致団結として文化祭に取り組んできたが、今年の中止の発表は生徒の意に染まぬものであったのは確実であり、もうすぐ文化祭だ!と纏まっていたのが散逸されたであろう。

その為、急遽開かれた文化祭を中止か、何らかの処置をとって開催するのかといったを決める会議が開かれた。


会議の前夜はインターネットで討論に用いられる語彙を同化させたり、生徒会の会計君から入手した今年度の予算から会議への対策を思念していた甲斐があり、満を持して会議に臨むことが出来た。


会議では運動部のごつい連中が参加し、更には顧問や立ち合いの先生が重要な予定で会議に出席出来なかった為一瞬、刃傷沙汰が起こり脅されて口裏合わせをするなどという馬鹿げた妄想が浮かんだが、そんな事は当然なかった。


会議の中の討論では、運動部の強情さにもはや哀憐の情を感じ、加えて序盤から中盤までは押されていたように見えたが、此方には以心伝心で俺の大切な懐刀である会計君が味方についているので、冷静に運動部の意見と生徒会の「オンラインでの文化祭」という意見でアウフヘーベンして「パフォーマンスを動画に撮ってネット内で公開する」というジンテーゼを創りだせた。


美味しい所を持っていった俺は更に嫌われたが、この状況に快感を覚えているのでよしとしよう。






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