第14話 入学試験編⑤
「おいおい。お前なんかやらかしたのか?」
「いや……そんなことはないんだけどなぁ」
「だよなぁ……不正が必要なのはむしろあいつらって感じがするし……」
アウェンが耳元で割と失礼なことを言っていた。
「バードラくんは彼がなぜ不正をしたと……?」
「簡単なことです。全問解答の上、間違いが見当たらないなど、どう考えても何かしらの不正なしには成し遂げられるものではありません。私たちですら六割の問題を解くので手一杯だったのです」
「バードラさんの言う通りです!」
「そうなんだぜ」
取り巻きも一緒になって盛り上げていた。
それを受けて少将が静かにこう告げた。
「確かにこれは人間業ではない。だがもし、もしもの話だが……彼が自力でこの答案を提出したのだとすれば、私は彼が我が軍の未来を背負って立つ男になると考える。バードラくん。君は先ほどミルト家の名まで持ち出したが、撤回はしなくて良いかね?」
そのオーラが、先ほどまでの厳しさと優しさを兼ね備えた講師としての顔でなく、軍人として、少将としての顔であることを示している。
「うぐ……」
重々しいプレッシャーを受け、バードラは一歩後ずさったが、すぐ気を取り直したようにこう答えた。
「も、もちろんです」
「ふむ……では、リルトくん。悪いが調査に付き合ってもらおうか。この後の試験は受けられなくなるが、もし不正がないとわかれば実技試験が受けられていなくとも私が必ず君を最上位のクラスに推薦し、編入させる。それで構わないかね?」
最上位のクラス……。
試験の目的はふるいにかけること以上に、このクラス分けの意味合いが強いという話は聞いていた。
最高位になると、もはや最初から見習士官ではなく少尉クラスとして実地訓練に参加するという。
実技試験なしでそれを約束してくれるというならラッキーだと思おう。
「わかり──」
「お待ちください」
答えようとしたところで、横から今度は凛とした女性の声に遮られた。
「おい。あれって例のお姫様だぞ」
アウェンに言われるまでもなく、先ほど話題に上がり、俺がとっさに飛び出してしまったあの第二皇女、メリリアであることはわかった。
言葉から感じる気品のようなものが、お嬢様と重なるのだ。
「メリリア=リ=ラ=ガルデルドです。いまのお話、私の名の下で全面的にこのリルトという方の証言を保証しましょう」
「なっ!?」
メリリアの凛とした声が教室に響く。
まず反応したのは汗をだらだらと流したバードラだった。
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