第13話 入学試験編④
「よおリルト。どうだったよ?」
「いやー。ギリギリだった。最初の方の問題が簡単だったから油断しちゃったかも……」
「お前らしくもねえな。まああんだけ本を読み漁ってりゃこっちで落ちるこたぁねえよな」
アウェンが励ますように声をかけてくれる。
本当にいいやつだった。
「最後の問題は難しかったよね。あれって多分、今の戦況にかなり近い状況下での軍事シミュレーションだったし」
「は……?」
あれ?
返事を期待したアウェンは口を開けたまま固まっている。
何か重大な間違いを犯したのだろうか。
不安だ……。
「お前まさかあれを全部解き切ったのか⁉︎」
「え? 試験ってそういうものじゃなかったの……?」
「馬鹿言え! あれは半分もやれば良い方だろ。お前あんだけいろんな書物読んどいて試験対策のこと書いてるのは読んでねえのか!?」
そういえばそんな本もあった気がする。
とにかく全部覚えるために優先度を下げたんだった……反省しなければ。
「まあ必要なかったみてえだから良いけどよ……。あれは全体の2割も答えりゃ合格ラインに乗る。時間的に半分まで解いて、その中で半分も正解してりゃ合格ってわけだよ」
「そんな感じなのか……」
「お前はなんか、変なところが抜けてるよな……」
アウェンの言葉に何も言い返せなかった。
似たようなことをお嬢様にも言われた気がする。
まあいいや。今は次のことに集中しよう。
「次は実技試験だよね?」
「ああ。まあそっちもお前なら問題はないし、こっちは俺も問題ねえな」
確かに会場にアウェンより強そうな人はいない。
強さだけでいえばアウェンがいう通り問題ないだろう。
「じゃあ頑張──」
「リルトくん……かね? 少々話したいことがあるんだがよろしいかね?」
実技試験の会場に向かって歩き出そうとした途端、試験官をしていたギルン少将に声をかけられた。
「はい……?」
「いや驚かせてすまない。君は魔法の使用を申請していなかったが、答案を見る限り何かしらの魔法を利用したのではないかと思ってね」
「魔法……?」
横にいるアウェンに助けを求めてみる。
「うぇっ⁉︎ 俺かよ……えっと……そいつは多分ですが、自力で全部やるやつですよ」
「まさか……君も受けたならわかるだろう? この試験で全問解答し、ざっと目を通す限り間違いもないのだ。ましてや最後の問題など……正直なところ私でもこれだけの答えを出せたかと言われれば怪しい……」
ギルン少将の顔は困惑に染まっており、この状況でその表情が示すことはつまり……不正行為に対する疑いだろう。
困ったな。
要するに何か魔法で不正がなかったか、というのが問題なんだろうけど……身に覚えがないものを証明するのって難しいんだよな……。
頭を悩ませていると横から一人の男が声を上げた。
「そいつは不正をしていました。ミルト子爵家の五男、バードラが見ておりました」
「ほう……?」
声を上げたのは先ほどの取り巻きを含む三人組のリーダー格、バードラだった。
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