第11話 入学試験編②

「あれって皇族専用車じゃあ……」

「おいおいまじかよ……訓練校に来るってことは誰だ?!」

「第三皇子のマルク様とか?」

「いや、第六皇子のビルド様も軍に入るって聞いたぞ!?」


 皇族専用車……確かに立派な馬が引く馬車だった。

 注目の的となるなか、中から出てきたのは……。


「第二皇女のメリリア様!? 噂通りの美人……」

「ほんとにすげえきれいだなぁ……」

「にしても……皇族まで出てきたってことは今回の同期はすげえことになりそうだな!」

「試験に合格できれば、だけどな」


 メリリアと呼ばれた皇女は、歳は俺たちと近い見た目をしている。十代だろう。

 パッと見た印象としては、周囲の反応の通りとても美しい容姿だということ。透き通るような白い肌と色素の薄い髪色、スッと伸びた目元は他の者を寄せ付けないオーラがあった。


「ほう……この場で一番身分が近いのは俺だ。俺が声をかけるぞ」

「流石バードラさん!」

「当然だぜ!」


 先程騒いでいた貴族の子息たちも皇女に気を取られたかと思った瞬間だった。


「てめえは許さねえけどな!」

「ひっ!?」


 バードラは皇女へ声をかけるために動いたと見せかけて、先程ぶつかったドワーフの子に再び氷魔法でつぶてを撃ち出したのだ。


「あ……」

「あいつら……!」


 みんながメリリアに目が奪われているタイミングだった。気づいたのは俺とアウェンだけらしい。アウェンはあのドワーフの子をなんとかしようと動き出す。

 だがその魔法はドワーフの少女に当たることなく、まっすぐに第二皇女メリリアの元へと飛んでいっていた。


「しまった!?」

「バードラさん!?」

「これはやべえんだぜ……」


 三人の反応を尻目に、俺は気づけばアウェンとは別の方向に動き出してしまっていた。

 余り目立つのは良くないと思いながらも。


 ──カキン


「お怪我はございませんか? お嬢様」

「えっ? ええ……下がっていいわ?」

「仰せのままに」


 ついいつもの癖で出てきてしまった……。

 すぐに離れられたのが救いだろう。


「おい。いまの誰だ?」

「さあ? でもずいぶん様になってたよなぁ」

「いやいや、魔法攻撃より早く動いて撃ち落とす剣技ってどんなだよ!? 相当な使い手だぞ」


 目立ってしまった。


「ちっ……あいつ俺が声をかけようとしていたというのに」

「バードラさんを差し置いて皇女様に声をかけるなんて常識のないやつだ」


 そしてなぜか騒ぎの中心になっていたバードラたちには逆恨みされていた。

 止めてなかったら割と大問題だったと思うんだけどなぁ……。


「お前……やっぱすげえんだな……」

「あはは……」


 アウェンの言葉を笑ってごまかしていると、ようやく職員が顔を出した。

 まずは全員筆記で試験を行うために校舎に入るらしい。

 バードラたちからの敵意を含め、周囲から妙な視線に晒されながら校内に足を踏み入れた。

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