その②
* * *
移動の
そして、四度目の発掘で、
「ルーファスさまー! 見て見て~! あったー! これシダの化石です! この地層、多分石炭紀です! すごい! たった二週間で見つけた~!」
「……すごいのか?」
ルーファス様は私が
「すごいですよ! 私、見つかるまで三年は
我が家から持ち込んだ自作の道具で
ルーファス様があくびをしながら起き上がって
「全く、宝物でも見つけたみたいだな」
「もちろん、宝物です!」
「宝石よりも?」
「宝石も……長い時間をかけてこの星が作りあげたものですから、その点では化石と同類ですね。宝です。あ、
「くくっ、ダイヤモンドとこの土くれが同類か。ほら、ピア、アーンして?」
ルーファス様にお弁当を口に
「んん? ……うわあ、
「……ピアはあの病気以来、心労も重なって
「……美味しい! 今度はタマゴのサンドイッチだわ! ルーファス様、私をここに連れてきてくれて本当にありがとうございます!」
おかげさまで手を休めることなく作業が進む。私は地面にペタンと座り込み、
「……ありがとうか。母があえて身につけた、王族も欲しがる家宝のダイヤモンドを見事にスルー。
「ルーファス様、アーン?」
私はぶつぶつとひとりごちているルーファス様の口元にサンドイッチを差し出した。
「な?」
「ちゃんと川で手を洗ってきましたわ! たまには私が食べさせてあげます。ルーファス様、そのまま本を読んでいていいですよ」
ルーファス様はためらいながら
「……本当だ。美味しいな。こんなこと、初めてだ」
そう言って
「ねー!」
私たちはなかなか良好な関係を築いている……よね?
「あ、こら! ダガー! 私の
私は自分が掘り起こしてできた土山に足を引っかけて、ばったり転んだ。
「ピア!
ルーファス様は転んだ私を起き上がらせて、土をパンパンとはたくと、私の鼻の先にキスをした。
「ふあっ!?」
「赤く
私は
「食後は
私は言われるままに寝転んだ。青空が
実はルーファス様の領地も決して安全ではなく、
そして、なんとブラッドとダガー、他の大きなワンちゃんたちも猟犬だった。敵
領地滞在中、ルーファス様には次期領主としてやるべきことが無限にある。
「ピア……その刺繡の……黄土色でグルグルとぐろ巻いている図案はなんなのだ」
「これですか? よくぞ聞いてくださいました! アンモナイトという化石です! かたつむりに似ていますが、タコの仲間ではないかと言われているんですよ!」
「……だよな。間違っても、ウ……おほん、うん、化石なんだな。言われてみれば、うん」
「お気に
「いらん!」
……ポイっと書斎を追い出される時もある。
そういう時は、ダイニングの広いテーブルをお借りして、メモを
本邸の親玉トーマさんをはじめ、いろいろな人が通りがかりに気づいた情報を教えてくれる。地図を指差してここでは
それを見たルーファス様が私と使用人全員を並ばせて、
「この地図は他言無用だ!」
と
「ルーファス様、私何か
おろおろとする私に、ルーファス様は優しく笑いかける。
「いいや? ピア、この地図は大変助かる。山地までは手が回っていなかったからね。
「でも、他言無用って……」
「そう、他言無用。ピアは採掘にしかこの地図を使わないだろう? ならばいいんだ。使用人も口が
「そうですよ、ピア様、この地図は領民にとって大変役に立ちそうです。とにかく……このような鳥の視点で
「……ちっ! わかっているよ、トーマ」
ハザードマップみたいに使えるのかな。まあトーマさんが頭を
後日その地図は、ルーファス様のお父様……
そうしているうちに、いつの間にか私は客間から、奥まった家族のエリアに移されて、
領地での朝は、庭で摘んだ美しい花を持って、ルーファス様が起こしに来てくれる。
「おはよう、ピア」
花束など、前世では一度も貰ったことはなかった。貰うたびにオレンジ色の気持ちが
スンっと
「……とっても
「よかった。さあ、
きっと今日もいい一日になる。ルーファス様のおかげで。
たくさんの花とその香りに包まれて、ルーファス様と字の練習をする。お忙しいはずなのに、なぜかキッチリ時間をどこかで取ってくる。
私は相変わらずルーファス様の膝の上だ。
「ルーファス様、もう私、重いでしょ? やめませんか? コレ」
「へぇ! ピアはもう私よりも字が
「そんなこと、ひとっことも、言ってませんよね!?」
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