幕間 溺愛しかない辣腕令息
溺愛しかない辣腕令息
「ピア、
大声で
「待って、ルーファス様。今い~いところなんです。この断面! 前回スギの化石が出た時と同じ
「ピーアー! 言うこときかないともう連れてこないよ?」
「はいはいはいはい! すぐ寝ます! 秒で寝ます!」
ピアは
「最近、うなされることはないか?」
「はい。このようにしっかり屋外で過ごされたあとは、ほどよい
「だがなかなか太らないな」
「……不意に、十歳らしからぬ表情をして、
ピアの心配事は残念ながら今すぐ
* * *
これ以上
可もなく不可もない相手だと思った。
しかし、ピアは高熱で死にかけて、この世とあの世の
それから事態は一変した。ピアは予言への絶望からすっかり弱気になり、従順が良しとされるありきたりの令嬢の仮面を外した。そして私に
「ルーファス様のことが
……待て? 私と結婚すれば、ロックウェル伯爵家は向こう三代は
ピアにとっては
まさか、この女の子は、侯爵家の金でもなく、権力でもなく、私の愛が
必死で
なんて……愛らしい。
そう思うと一気に体が熱くなった。
私は、一生経験するわけがないとタカをくくっていた『
安心して私を愛せる
大事に大事に
ロックウェル伯爵家は代々学者一族だ。当代の伯爵は低コストでの農薬の開発に成功し、またその技術を広く役立てる条件で王家に差し出したため一目置かれている。中にはその無欲ぶりをあざ笑うものもいるが、そんな
ピアと全く同じ髪と瞳の色を持つ
そんな家族を優しく見守るお
そして、意外にもピアこそがその血筋の集大成、神童だった。地形や地質への独自の、確固たる視点を、たった十歳で持っていた。
綿密な調査から地形を
「おい、さっきダガーが急に森に走っていったな? 何人いた?」
音もなく、
「六人です」
「
スタン領は広大なので、残念ながら
「今は落としていますが、
ピアの頭を
「ふーん。
私は冷静にピアの
眠っている今は見えない
しかし、その知性の
ピアの今後もたらすであろう利権が欲しいわけではない。私の前ではただの、私を一途に愛してくれる少女で、いつも笑っていてほしい。
それを
愛するピアを薄汚い権力
「我がスタン家を、私を敵に回すとどうなるか、そろそろしっかり全力で知らしめていこうかな」
* * *
数日後の深夜、父の
「この一週間の領地への
トーマが
「地図の存在がどこからか
「メリークの件はスタン領の私兵の配置が換わったことで『軍師が入った、殺せ』という命が下ったようです」
この書斎の一番いい場所に
ただ広まる前に、守りが弱い
「軍師ねえ。それが十歳の少女と知ったら驚くだろうね」
思わず笑いが零れる。
「ベアードのほうは、ロックウェル伯爵が王に何か進言し、それが娘の提案だとぽろっと零したことが、耳に入り、取り込もうとしたようです」
マイクが困った顔で報告する。
「お
「ルーファス様、そうおっしゃいますな。ピア様のご父君には当然娘を語る権利がありますよ」
トーマに軽く
「わかってるさ。うちが目を光らせ守ればいいだけだ」
ベアード伯爵家の
「ベアード、もう
「ご当主様はもう少し泳がせろとおっしゃっています。息のかかった
長くなると思ったのか、トーマがお茶を
「
「でもさ、私からピアを
「王都は今、来年のジョン王の
トーマが片方の口の端だけ引き上げて笑う。
「父上の許可なしでやれるのはこのくらいだろう? 即位記念のお祝いで在庫を放出するだけだ。
「若奥様に手を出した愚かさをじわじわと思い知るでしょうね」
マイクが
「全く……まさか国一番の天才があどけない少女とは! ルーファス様が真っ白の
「そして、ピア様はピア様で筆頭侯爵家の
確かにピアはいわゆる気さくな話し方をする。脳内で合理的に考えを進めるためには
ところでマイク、庭師見習いの少年とは? まあいい。それよりも、
「ピアの家族はもはや私の弱点だ。ロックウェル家に護衛を配置するように父上に伝えてくれ。あの家は防犯対策
ピアの心は予言での、私のふるまいで傷ついている。これ以上傷つけてなるものか!
そしておそらく、予言について私に話していないこともある。誰にも相談できないひどいものなのだろう。
そういえば、
「マイク、ラムゼー
「今のところ目立った動きは何も。新しい使用人を入れる
「そう……」
予言のせいでどこか大人びた
ピアは知らない。時として非情な決断を
清らかなピアに、ただ愛されているという事実が、私のアイデンティティーを支え、もはやピアの
「マイク、
「侯爵家の宝をお守りできるなど、光栄です」
これ以上、君を傷つけないと
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