第27話 夢の世界へ誘われて

「ごちそうさまー!」

「マリア、もう食べ終えたのかい? 早食いは体に良くないんだよ」

 おばあちゃんに言われたけど、わたしははにかみながら食器を片付ける。

「えへへ……分かってるんだけど、ちょっと時間なくてさ」

「そうかい……」

 おばあちゃんが呟くと、ママが心配そうに言った。

「頑張るのはいいけど、徹夜は駄目よ。寝不足は健康とお肌の大敵なんだから」

「はーい」

 確かにそうだ。せっかく一息ついたし、タイマーをセットして少しだけ休もうかな。

 わたしは二階の部屋に戻り、ベッドにごろんと寝っ転がると、携帯端末を起動させた。

 あっ、『ホエールズ・ラボ』さんの動画が上がってる!

 わたしは通知に飛びついて、即座にYoutubeを開いた。

 ストックがあるのか、定期的に上がっている『ホエールズ・ラボ』さんの動画。

 わたしは通知のおかげで疲れが全身から滲み出て、消えていくような気がした。

 今日はおでこがチャーミングなシロイルカのあみぐるみだった。

 サムネに映ったシロイルカは再現度がかなり高くて、見ているだけで心が潤った。

 やっぱり、『ホエールズ・ラボ』さんはすごいな……。

 まさか裏では文化祭用衣装を作っているなんて、誰も思わないだろう。

 わたしは大きくて綺麗な手があみぐるみを編んでいく様をボーっと眺めていた。

 いつか、わたしも……『ホエールズ・ラボ』さんみたいに……なりたいなー……。

 連日夜更かしして寝不足なわたしの耳元に心地いいBGMが流れてくる。

 眠気にすら気付かないまま、わたしは夢の世界へ誘われてしまった。

 翌日、全身の血が凍り付き、甲高い悲鳴を上げて家族を驚かせた事は言うまでもない。

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