第174話「責任のゆくえ」
俺たちはヘレヘレ森丘付近の町へとやってきた。
馬車を使えば日帰りも可能な距離である。
ガルヴァか誰かが暗躍しているのは、今のところ学園から日帰りが可能なダンジョンが中心だというのが俺の予想だ。
もっとも読みが当たっていたところで、タイミングよく遭遇できるかどうかは別問題なんだが。
要するに運頼みなのだが、まあ原作よりずっと早い段階でガルヴァを倒そうとするなら、運が影響してくるのはやむを得ないだろう。
「蛍」
町に入った瞬間に俺は右隣を歩くサムライガールに呼びかける。
「何でしょう?」
蛍は足を止めて小さい声で答えた。
「お前の探知範囲ってどれくらいなんだ? ダンジョンから離れた場所でも出入りに気づけるか?」
聞いたのはとても重要な点である。
ダンジョンを出入りする存在を、どの程度離れた位置から把握できるのか。
これによって俺たちが待機するポイントが違ってくるからだ。
「ええっと、こちらの単位ですと五百メートルか六百メートルくらいですね」
「すごいな」
かなりの距離じゃないかと感心すると、蛍は首をゆっくりと横に振る。
「おほめにあずかりうれしいのですが、これはあくまでもそれがしに敵意を持つ存在にかぎった話です。それがしを認識すらしていない相手となると、百メートルほどが限界でしょう」
自分に敵意を向けているか、何らかの意識を向けているか、それとも認識すらしていないかで難易度は違うのだと彼女は話す。
「そういうものなんだな」
敵の探知系スキルについては正直よくわからない。
前世で武術をたしなんでいたわけじゃないし、こっちの世界で適性を持っているわけでもない。
蛍の言うことを参考にして作戦を組み立てる必要があるだろう。
「じゃあ百メートルくらいの距離をとりつつ、目視に頼りながらとぶらついてみるか」
「はい。それがしの力不足で申し訳ありません」
蛍は責任の感じたのか、表情をくもらせて謝った。
「いや、お前のせいじゃないよ。俺の戦略がちょっと背伸びしてるだけさ」
彼女は何も悪くない。
悪いとすれば今後の憂いを断つために、今シナリオを改変しようとしている俺自身だろう。「ですが……」
蛍はすべての責任を俺が背負うとすることに納得ができないらしい。
どこか不満げにこっちを見て訴えてきている。
「作戦を考える奴が責任をとるものだろう」
作戦の段階でまずかったら元も子もないんだから。
そりゃ作戦が優れていて、よほどのことがないかぎり成功できるってものを失敗したら、その時は実行者の責任になるかもしれないが。
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