第135話「信じることと幻想を抱くことは違う」
放課後、錬成部の前に集合して、エドワードが来るのを待つ。
「おお、早いなみんな」
十五分後くらいにやってきたエドワードは目を丸くする。
「メンバー発表を待ちかねたんです」
俺がもっともらしい理由を告げると、
「わかる。ワクワクするもんな」
と共感された。
そんなものなのかな。
ウソから出たまこと……でいいのか、これ?
内心首をかしげた俺をよそにエドワードはズボンのポケットから折りたたんだ紙を取り出す。
「三年俺、カシュー、フラン。二年リプレ、グレック、ジェシー、一年はお前たち四名だ」
「思ってたより人数が少ねーな」
ウルスラが意外そうに言う。
「他にもいくつかチームがあるんだろ」
俺が指摘すると、
「あ、そうか」
ウルスラは忘れてたと手を叩いた。
「シジマの言うとおりだな。行き先はてんこ森だから、人数が多くてもあまり意味はない。というか身動きがとれない」
エドワードはそう説明する。
「ほんと言うと十人でも多いくらいですものね」
リプレが苦笑気味に言う。
「まあこれ以上人数を減らすと、主旨が変わってきかねないからな」
答えるエドワードも似たような表情だった。
「てか先輩たちと同じアライアンスなんですね」
アインがそう言うと、
「まあ、シジマとお前が錬成部だからな」
とエドワードは応じる。
「一年のパーティーを解体するのもかわいそうという理由でそのまま組まれるんだ」
彼の説明にアインは納得したようである。
俺たちの実態を正確に知られていたら、たぶん解体されていただろうな。
「当日のリーダーは二年のグレックがやる。俺はというか、三年は基本黙ってるからそのつもりでいてくれ」
二年を育てるのが目的なんだから三年が黙ってるのは当たり前だな。
問題はグレックという生徒がどういうタイプなのかだ。
ゲームでは出てこなかった名前なので予想するのが難しい。
「グレック先輩ってどんな人なんですか?」
リプレに聞くのが手っ取り早いと判断したので聞いてみる。
「おっと、それは言えないルールなの。ごめんね」
彼女は左目をつぶって唇に指をあてて言った。
お茶目でかわいかったが、肝心の答えは残念である。
「すかさずその問いが出てくるあたり、シジマくんはやっぱり別格な感じがあるわね」
そう褒めてくれたが別にうれしくない。
褒めてくれるなら情報をくれと思うが、たぶん通らないだろうな。
シェラあたりにこっそり聞いてみようか。
「ロングフォードやグルンヴァルトに聞くのも禁止な」
と思っていたらエドワードに先回りされてしまう。
ガーンとショックを受けていると、
「抜け目のないやつめ」
エドワードに笑われる。
そりゃ気づいたことは試してみないとなぁと思う。
「何となくシジマくんがわかってきたかも……」
なんてリプレは意味ありげなことを言った。
そろそろ一か月になるんだし、ある程度人柄はわかってくるよなぁ。
俺だってリプレが真面目なようでいてけっこうお茶目な性格だとか、エドワードはわりと冗談好きとかわかってきたし。
おかげでつき合いやすくていい感じだ。
「ところで準備は大丈夫か?」
「虫よけなら七十ほど作りました」
話を変えようとしたエドワードに乗っかって正直に言うと、
「ファッ!?」
「えええっ!?」
二人の先輩に仲良く驚かれた。
そんなにびっくりするようなことだったか?
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