第65話 意味ない仮定

 その答えは考えてみれば単純なことだったと判明する。


「二人一組になるわけだが、余ったやつは生徒会メンバーと組んでもらうぞ」


 とローランがダンジョン前で言ったのだ。

 今日もシェラとパウルが来ていて、ざわめきとともに彼らに視線が集まる。


 普通に考えて彼らが戦いに参加するはずがないが、それでも組みたい生徒はいるようだ。


 蛍とアインがやってくる。


「どうしますか?」


「また二人で組んでもらいたいと思ってたけど、生徒会のフォローがあるんだよな」


 シェラにしてもパウルにしても戦力としては信頼できる相手だ。

 

「蛍と組むか」


「はい!」


 蛍は喜色満面の笑みを浮かべる。

 アインが苦笑してるのは予想してたからかな。


 もっともアインが余るとはかぎらないわけだが……。

 なんて思ったものの、普通に余ってしまった。


「じゃあパウル、組んでやってくれ」


「わかりました」


 ローランの指示でアインとパウルというペアができあがる。


「今日の目標は第三階層までだ」


 前回は鳴らしだったからか、今回は一階層増えたな。


「無理せずにチャレンジしていけ!」


 とローランが熱く言う。

 無理しないとチャレンジするは相反してると思うんだが、指摘するのは野暮だ。


「エースケ殿、第三階層まで行けるらしいですよ」


 順次入っていく同級生の背中をながめながら、蛍が小声で話しかけてきた。


「入っていいなら行こう。第三階層のほうが効率よくレベル上げできる」


 それにドロップする素材もいい。

 錬成スキルのレベル上げのためには、第三階層のほうがいいのだ。


「わかりました」


「蛍一人なら第四階層も行けるんじゃないか?」


「意味ない仮定ですよ」


 ふと思って問いかけると、彼女は微笑で応じる。

 気にしなくてもいいという意味なのだろうと解釈した。


「授業以外で行けばいいしな」


 と言うと微笑まれる。

 正解だったらしい。


 とりあえずレベルあげて蛍なしでもダンジョンにもぐれる日を作ったほうがいいかなぁ、と考えるのが正しいのだろう。


 しかし、この蛍はどうも剣術部の活動にあまり興味がなさそうである。

 無理に突き放してるように思われるのもどうかなと考えてしまう。


 第三階層の敵はどれも手強い。

 この階層に来ると噛みつき石が一番弱い相手になるので、今の俺じゃ歯が立たなくなるのも当然だ。 


 置いて毛はダメージを与える手段さえあれば俺でも削ることはできるはずなんで、何か作ることを考えるか。


 ……そろそろ装備をそろえていくべきかもしれないな。

 噛みつき石や置いて毛なら装備で勝てるようになるんだから。


 先の目標を決めようとするあまり、目先のことまで気が回ってなかったかと反省する。


 噛みつき石は魔法攻撃、置いて毛は魔法攻撃か属性攻撃で倒しやすい。

 ぶっちゃけこの辺の階層のドロップで作れる装備は大したことがない。


 そもそも作るのが無理まであるので、買ったほうが早い。

 さっそく錬成部に部費の貢献をさせてもらおう。


 蛍が倒した敵からドロップを集めるのだけ二人がかりでやる。


「考えはまとまりましたか?」


 すると蛍が俺の内面を見透かしたかのような発言をした。

 

「うん」


 大した観察力だなと感心する。

 そう言えばゲームでもそんな風に描かれていたな。


 察しのいいパートナーはありがたい話だ。


「とりあえず装備を買って自分でもモンスターと戦えるようにしよう」


「よろしいのですか?」


 蛍は俺の発言に驚いたらしい。


「もっと別の、大きなことのためにお金を貯めていらっしゃると思ったのですが」


 そうやって聞いてくる。

 何か勘違いをされてたみたいだな。


「いやまあ、ロングフォードとグルンヴァルトからお金をもらえるっていうアテができたからね。ちょっとくらいなら使っても平気だろう」


 と答える。

 ぶっちゃけリバーシがどれだけ売れるのか、そんなに期待できない気がするんだが。

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