第61話 れっきとした一員

「この錬成品、どうしましょうかね?」


「廃棄したり、バザーで売ったりするね」


 エドワードが答えてくれた。

 ゲームだとたしか捨てるだけだったはず。


 バザーで売るって道ができてるのか。

 しかし買い手なんてつくんだろうか、これに?


「まあこれは廃棄物だ」


 と思ってたらエドワードに先回りされた。

 

「ですよねー」


 買い手がいるほうが驚きだったので相槌を打つ。


「もったいないというか、残念な気がいたします」


 蛍はそう言ってくれるが、すばらしい完成品の下には大量の失敗作が眠ってるというのは錬金術のならいだ。


 錬金術にかぎった話じゃないかもしれないが、今は割愛する。


「蛍だって剣が上達するためにたくさん練習したんだろうに」


「それはそうですけど。……なるほど」


 俺の言いたいこと、だいたいは伝わったらしい。

 

「さて、また明日いっぱい素材を取らないとな」


「おともいたします」


 肩を回しながら言うと、蛍がすかさず応じる。


「僕も行かなきゃいけないよね?」


 アインが何やら複雑な顔をして聞いてきた。


「当然だろう。お前が強くなれば、蛍の負担は軽くなるんだぞ」


 俺の護衛から解放されたいと思っているのか、怪しい気は正直している。

 だから別の言い方を選ぶ。


「う、うん。頑張るよ」


「負担に思ったことはないですよ?」


 蛍は一応言っておこうという顔で軽く右手をあげて申告したので、小さくうなずいておいた。


「私、まだ中級道具袋しか持ってないのよねえ」


 リプレはそっとため息をつく。


「俺もだ」


 エドワードも彼女にならう。

 まだ二年のリプレはともかくエドワードもとは、少し意外だった。


「素材集め、一年に頼むわけにはいかないしなあ」


 とエドワードはぼやく。

 二、三年がほしがる素材はより上質だが、その分モンスターも強い。


 蛍も俺とアインという足手まといが二人いるとさすがに厳しいだろう。


「頑張って俺が部費を稼ぎますよ」


 そうすれば先輩たちも恩恵を受けることができるはずだ。


「それもまずいわよ」


「一年に世話になりっぱなしというわけにはいかない」


 先輩たちは苦笑する。

 当然の顔をして要求されるより、一億倍はマシな対応だった。


「とは言えせっかくの好意を無下にするのも心苦しい。作り方を教えてもらい、

我々が作って製作報酬をもらえるという形にすれば、お互い利益があると思うが」


 エドワードの提案はうなずけるものだった。

 いちいち自分で作らなくてもいいというのは、この際魅力的である。


 誰かに委託して作ってもらい、駄賃を払うのはよいアイデアだった。


「いいですね。それでいきましょう」


「私たちも頑張っていい発明をしようという発想も持ってください」


 俺とエドワードが握手をかわすと、リプレがこめかみに手を当てて彼に苦言を呈する。


「はは。もちろん、あきらめたつもりはない。だが、それとは別に話しておく必要があると思ってね」


「そうですね……」


 リプレは何か言いたそうな顔をしながらも、言葉を飲み込む。

 ちょっと気が早い内容かもしれないが、俺が「部費を稼ぐ」発言がきっかけなんだよな。

 

「うむ。互いは仲間であり、ライバルである。せいぜい励みたまえ、若人たちよ。ひゃひゃひゃ」


 ウィガンにいい感じでまとめられた時、一七三〇の下校のチャイムが鳴る。

 寮の門限はそんなに厳しくないが、意味なく学園内に残ることはできない。


 その辺は同じなのだろう。

 先輩たちは少し焦った顔をする。


「もうこんな時間か。急いで下校し、集合しよう」


 そう言ったエドワードに、蛍が疑問を投げた。


「それがしも参加してもいいのでしょうか?」


「掛け持ちとは言えれっきとした錬成部の一員だろ? かまわない」


「遠慮せず来てね」


 エドワードは何を言ってるんだという顔で、リプレは優しく包むように微笑みかける。

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