第35話 蛍の不安

 二人が冷静になったところで俺は提案する。


「せっかくだし三人でお茶でもしないか? これからはクラスメートなんだし」


「まあエースケ殿がそうおっしゃるなら……」


「帰りたい気分なんだけどなあ」


 蛍はすぐにうなずいてくれたが、アインは何やらしぶった。

 しょうがないな。


「この蛍はとても強いサムライなんだ。親睦を深めておくと、アインにとって利点はデカいと思うぜ」


「そうなのか……いや、打算だけでつき合うってのはどうなの?」


 アインからは正論が返ってくる。


「蛍は美人だぞって言われるよりはよくないか?」


「そ、そりゃまあそうだけど」


 アインは恥ずかしそうにもじもじした。

 女の子慣れはしてないんだな。


 本来、人のことはちっとも言えない立場だけど、何食わぬ態度で蛍に言った。


「蛍、予定がないならつき合ってくれ」


 黙って聞いていた蛍はこくりとうなずく。

 何か言いたそうではあるが、空気を読んでくれるんだからイイ女だよな。


 三人で食堂の隅でお茶を注文する。


「えーと風連坂さん?」


 アインが遠慮がちに話しかけた。


「はい、何でしょう、ゴリアテ殿」


「よろしくね」


「ええ」


 二人のあいさつは何か思ってた以上にぎこちないな。

 間に俺が入らないとまずいパターンかもしれない。


「風連坂さんはサムライなんだって?」


「ええ」


 蛍は質問には答えるものの、自分から聞き返そうとはしなかった。

 興味ありませんってサインなのかも。


「アインは戦士で、将来有望ってことらしいんだ」


「それではエースケ殿が危険では?」


 蛍はちょっとけわしい顔になる。


「だから第一階層にしか行かなかったんだよ」


 とりあえず彼女をなだめた。


「何だかお邪魔みたいだね。僕はこれで」


 アインはお茶を急いで飲み干し、そそくさと立ち去る。


「蛍、心配かけたのは悪かったが、それにしても態度が悪いぞ」


 さっそく蛍に苦言を呈する。


「申し訳ありません」


 蛍は目を伏せて素直に謝った。

 だが、彼女はそれだけではすませない。


「ただ、教えていただきたいのです。エースケ殿は何を考えていらっしゃるのでしょう?」


「俺の考えてること?」


 おうむ返しに聞くと、蛍は少し身を乗り出す。

 気づいてないんだろうけど、胸元が強調されるぞ……。


「お金を稼ぎ、ダンジョンに慣れる。エースケ殿の将来設計はそのようなものだと思っていましたが」


「簡単に言えばそうなるな」


 蛍の解釈は何も間違っていない。

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