第34話 ちょっと友達とダンジョンに

「俺が守ってやるよ」


「ううっ……錬金術師に言われた……」


 アインは情けない声を出しながらついてくる。

 その後、モンスターとは遭遇しなかったものの、他の生徒たちとばったり出くわした。


 二年の男子生徒の青、赤、黄色の髪をした三人組である。


「何だ、一年か?」


「こんなところで何をしてやがる?」


 あまりいい感情を抱いてないことがあきらかだったので、ここはヘタレのフリだ。


「いや、ダンジョンに行ってみたいなと思ってきたんですけど、モンスターがこわくなって逃げ帰るところです」


 へらへら笑って説明すると、嘲笑と冷笑が向けられる。

 ここに蛍がいなくてよかったぜ。


「馬鹿なやつらめ。物見遊山気分でダンジョンに入ったのか」


「無事なところを見ると、すぐに逃げ帰ってきたのか」


「逃げ足の速さだけは見るべき部分があると言えるか」


 信号トリオはそう言うとダンジョンに入っていく。

 ゲームの時にもいたな、あんなやつら。


 信号トリオとしか覚えてないや。

 さっさと立ち去ってくれたので、俺たちも逃げ帰ろう。


「食堂って言っても寮の食堂と学園の食堂があるんだよなあ」


「ややこしいね」


 アインもそう思うか。

 まったく同意見だ。


 休みでもわざわざ学園まで歩いて行かないと食堂を使えない、なんてことにならないためなんだろうな。


 戻ってくると女子生徒と手を振って別れた蛍が駆け寄ってくる。


「エースケ殿!」


「どしたんだ、蛍」


 俺の声かけは愛想がなかったせいか、蛍は拗ねたような顔になった。


「どちらにいらっしゃったのですか?」


「ちょっと友達を連れてダンジョンに」


 簡潔に説明したが、蛍には通じたらしく眉を動かす。


「そんな散歩に行くノリだったんだ」


 アインが天を仰いでる。


「無茶をしましたね。彼、戦えるんですか? そうは見えないんですが」


 蛍に指摘されると、アインは体を震わせた。


「やっぱり無茶だったんだ……」


「ダメそうだから逃げ帰ってきた」


 聞こえなかったフリをして、端的に蛍に話す。


「そうでしょう。どうしてそれがしを連れて行ってくださらなかったのですか?」


 彼女は問い詰めるような目を俺に向けてくる。


「友達を作る邪魔をしたら悪いなと。他意はないよ」


「は、はあ……」


 返答に意表を突かれたらしく、蛍はきょとんとした。


「お互いしか友達がいないのもさびしいもんだしな。一人くらい同性の友達がいてもいいじゃないか」


「それはそうかもしれません」


 蛍は毒気を抜かれた顔をする。

 ダンジョンに行くのにのけものにされたとでも勘違いしてたんだろうか。


「何か早合点してたのか? かわいいな」


「なっ!?!?!?」

 

 蛍は真っ赤になって口をパクパクさせる。


「カップルに目の前でいちゃつかれてつらい」


 アインのそんな言葉はとりあえず無視しよう。

 

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