第24話 目標達成

「貴殿の助けになれたのなら光栄ですね」


 蛍はひかえめに応じて歩き出す。

 無駄口を叩く時間は終わりってわけだ。


 置いて毛は有効な攻撃手段を持ってれば怖くない分、ドロップはうまくない。

 無念のかけらは単独だと意味がないしな……一応拾っておくけど。


「おや、ドロップを集めるのですか?」


 蛍は意外そうな顔になった。


「まあ何かの役に立つ可能性があるから」


 そう説明しておく。

 ほどなくて噛みつき石が二体出たものの、蛍は援護するヒマもなく切り捨てる。


 本当に俺っていらないなと思いながら歩いてると、マジックワームが出た。

 黒く光る皮膚を持った全長五十センチくらいのミミズである。

 

「お、こいつだよ」


「了解」


 蛍はそう言ってあっさり切り捨てた。

 駆け引きも何もあったもんじゃないよな。


 この辺のモンスターだと蛍の踏み込みに反応すらできないらしい。

 鍛錬ダンジョンにもぐった結果そうなったとゲームの時は思っていたんだが、素でこの強さだったのかよ。


 この子と肩を並べられるようになるのって相当大変だぞ。

 だけど目標があったほうが張り合いあるので頑張るぞ。


 魔力の糸を拾いながら決意し、蛍の後を追う。

 マジックワームと運よく連戦できて糸を十本手に入れた。


「モメンヘビ、出ないな」


「そうですね」


 二人できょろきょろする。

 そして蛍がハッとしてある方向へ顔を向けた。

 

 チリンチリンという音が聞こえてくる。

 えっ、ここでまさかのレアモンスターか?


 低確率で遭遇するレアモンスター「送りカナ」だ。

 送り狼をモチーフにしたのか、全身が金色で瞳が黒い狼型モンスターである。


「送りカナだ、ラッキーだな」


「エースケ殿はご存じなのですね、このモンスター?」


 蛍が興味ありげな声を向けた。


「普通に倒してくれていいよ」


「承りました」


 戦闘と同時に蛍と送りカナは同時に飛びかかり、送りカナは悲鳴をあげて消滅する。


 金色の鈴と金色の毛の二つのアイテムが落ちた。


「これがほしかったんだ」


「そうなのですか?」


 蛍が知りたそうな顔をしているので説明する。


「これとさっき拾った無念のかけらを錬成すると、高額で売れるアイテムになるんだよ。取り分は蛍が七割くらいでいい?」


 同時に提案もした。


「それがしは知識もなければ錬成もできないので五対五か、エースケ殿が六でいいのでは?」


 蛍も欲がないな。


「じゃあ五対五にするか」


 本当は蛍が六くらいのほうがいいと思うんだが、けっこう頑固だしな。


「それがよいかと」


 蛍は満足そうにうなずき、そして気を引き締めて廊下に顔を向けた。

 また敵かと思ったらようやくモメンヘビのおでましだった。


 全長は一メートルくらいの白い体と赤い瞳が印象的な、ヘビ型モンスターである。


 蛍の相手にならなかったのはもう言うまでもないだろう。

 大きな布を二枚も落としてくれた。


「目標達成だね。ラッキーに助けられた感も大きいが」


「運も実力のうちですよ」


 悪びれず言った蛍と握手をかわし、地上に戻る。

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